前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節 

第1節 概  説

 初めに,調査の対象とした50万人中,上記5罪種について有期の実刑(懲役及び禁銅)を科せられた者の平均刑期を見たものが, II-3図である・殺人では最高7年6か月(昭和56年)最低5年4か月(44年),強盗では最高5年5か月(39年)最低4年7か月(35年),強姦では最高3年3か月(53年)最低2年8か月(27年),恐喝では最高1年3か月(55年)最低11か月(31年),傷害では最高1年4か月(29年)最低1年(35年)となっており,殺人において最高と最低の幅が最も大きく,強盗がこれに次いでいる。なお,執行猶予者について見ると,殺人,強盗,強姦は最高3年と最低2年の間に,恐喝と傷害は最高1年2か月と最低9か月の間にそれぞれ集中している。

II-3図 暴力事犯者の平均刑期の推移(昭和25年〜57年)

II-4図 暴力事犯者の科刑別再犯率の推移(昭和25年〜57年)

 次に,上記5罪種のいずれかにより有期刑を科せられた暴力事犯者全体の一般再犯の再犯率(本章では,ある年次において刑が確定した者のうち,その後,昭和57年12月末までに再犯刑が確定した者の比率をいう。)を,実刑を科せられた者I(以下本章では「実刑者」という。)と刑の執行を猶予された者(以下本章では「執行猶予者」という。)に分けて,刑確定の年次別にその推移を見ると,II-4図のとおりである。
 なお,以下の図・表においては,昭和57年末までに刑が確定した者についての再犯率も掲げてあるが,再犯率に関する分析・検討は,47年末までに刑が確定したものについてだけ行っている。これは,刑が確定して間がない者については,再犯に及ぶ期間が余りに短かく,検討の対象とするには不適当であると考えられるからである。
 実刑者では,おおむね6割強ないし7割弱の者に再犯が認められるのに対し,執行猶予者ではほぼ5割前後となっており,実刑者と執行猶予者の間には際立った再犯率の相違が認められる。また,再犯率の年次別推移を見ると,実刑者,執行猶予者のいずれにあっても,昭和30年代に判決が確定した者の再犯率が最も高く,実刑者の場合68.4%(10年間通算の比率),執行猶予者の場合53.6%(前に同じ。)となっている。
 II-5図は,罪種別に一般再犯の再犯率の推移を見たものである。再犯率は,恐喝が最も高く,ほぼ70%前後を維持し,次いで高いのが傷害で60%強から70%弱の間で推移している。殺人,強盗,強姦のうちでは,全体的に見た場合,強盗が最も再犯率が高く,50%弱から60%弱の間を推移し,強姦は年次によっては強盗以上に再犯率が突出しているところもあるが,平均的に見ると強盗の再犯率よりも若干低く,おおむね40%弱から50%台のところで推移しており,殺人は最も再犯率が低く30%程度から45%程度の間である。

II‐5図 暴力事犯者の罪種別再犯率の推移(昭和25年〜57年)