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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第1章/第4節/1 

第4節 金融機関強盗

1 概  況

 いわゆる金融機関強盗は,その対象が,一般市民の日常生活と極めて密接な関係にある,銀行,相互銀行,郵便局,農業協同組合,漁業協同組合,信用金庫,信用組合,さらに,最近では,サラリーマン金融と通称される庶民金融機関(以下「サラ金」という。)であるため,身近に発生する印象を与え,市民生活に不安を与えているばかりか,犯行時に現場に居合わせた不特定の市民を巻き添えにすることさえ少なくなく,大きな社会問題となっている。
 II-18表は,最近3年間について,強盗一般及び金融機関強盗の認知件数,検挙件数及び検挙率を見たものである。強盗の認知件数に大きな変化はないが,金融機関強盗は,昭和55年に179件であったものが,56年に214件に急増し,57年には4件減少したものの,210件の多くを数え,強盗一般に占める比率も,55年8.1%,56年9.2%,57年9.3%と増加傾向を示すとともに,その構成比自体もかなりの率を占めている。次に,金融機関強盗の検挙率を見ると,強盗一般のそれと比較しても低いばかりでなく,刑法犯一般の検挙率よりも低いことが注目される。
 II-19表は,金融機関強盗の認知件数,検挙件数を被害金融機関の種類別に見たものである。昭和57年には,前年と比べ,銀行とサラ金での被害が増加したが,特に,サラ金での被害の増加(27件,64.3%)は著しいものがある。これは金融機関強盗の総数に変化がないことから見て,被害対象金融機関の比重がサラ金に移行していることを示すものと言えよう。検挙率を見ると,いずれの年次も銀行が最も高く,信用金庫等がこれに次ぎ,57年には,農協等(25.0%)及びサラ金(47.8%)が低い。

II-18表 強盗及び金融機関強盗事犯の認知・検挙件数(昭和55年〜57年)

II-19表 金融機関強盗事犯の認知・検挙件数(昭和55年〜57年)