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3 暴力犯罪に対する検察・裁判 これまで暴力犯罪の動向を認知件数,検挙件数,検挙人員等を中心に種々検討分析してきたが,次に,若干視点を変え,暴力犯罪を検察・裁判の面から見ることにする。
II-6表は,捜査の結果犯罪の成立の認められたもののうち,検察が起訴した比率を殺人,強盗,強姦及び傷害の各罪名別に昭和30年以降について示したものである。罪名別に見ると,殺人は,30年の86.5%からおおむね上昇傾向を示し,40年に90%を超え,以後50年までおおむね90%前後で推移し,51年以降は92%前後を維持し,56年では戦後最高の93.6%を記録している。強盗は,30年では89.7%であったが,31年以降は各年次とも90%を超え,若干の起伏はあるものの,おおむね横ばい状態で推移している。強姦については,30年から33年までは80%台,その後51年までは,各年次ともおおむね70%台で推移し,52年以降については,56年に84.1%と30年以降の最高を記録するなど,各年次とも80%を上回っていた。しかし,57年には80%を下回っている。傷害では,30年の61.4%から40年の79.9%までほぼ上昇傾向を示し,40年代はほぼ79%前後で推移し,50年以降は各年次とも80%を上回り,56年には戦後最高の84.4%を記録している。 II-6表 暴力犯罪の起訴率(昭和30年,40年,50年,56年,57年) II-7表は,地方裁判所において,殺人,強盗及び強姦により死刑及び無期懲役を言い渡された人員について,昭和36年以降,各5年間の合計人員で見たものである(なお,56年は単年で見ている。)。言渡人員の多い殺人,強盗で推移を見ると,両罪種の死刑及び無期懲役とも36年以降50年まで減少傾向にあるが,51年から55年の5年間の合計数は,いずれも前5年間の合計数を上回っており,注目される。なお,傷害致死により無期懲役を言い渡された者は,34年に1人あるだけで,それ以後にはない。II-7表 暴力事犯の死刑・無期懲役言渡人員(昭和36年〜56年) 次に,殺人,強盗,強姦及び傷害により有期の懲役又は禁銅に処された者について見ると,その罪種別・判決確定年次別平均刑期は,本編第3章第1節に詳述するとおり比較的変動が少ないと言えるが,殺人において年次ごとの平均刑期の差が最も著しいことが注目される。上記4罪種について,地方裁判所の言い渡した執行猶予の率を昭和36年以降について,各5年間の平均で見たものがII-8表である(なお,56年は単年で見ている。)。各罪種別では強盗の執行猶予率が最も低く,次いで,殺人,強姦,傷害の順となっている。次に,その推移を見ると,殺人の執行猶予率は,上昇傾向にあったが,56年には,25.3%と25年以降では38年に次いで低い数値となっており注目に値する。強盗では当初横ばい状態で推移したが,その後46年からの5年間の率では若干上昇し,次いで,51年からの5年間では以前の16%台の水準まで低下した。しかし,56年には18.4%と前5年間の平均を上回っている。強姦については50年まで上昇傾向を示し,その後51年からの5年間でやや低下したが,56年には47.8%と25年以降最高の数値になっている。傷害は,強姦と同じような推移をたどっているが,56年には強姦とは逆に50.5%と低い数値となっている。 II-8表 暴力事犯の執行猶予率 |