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 昭和58年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/2 

2 収賄事犯

 公務員犯罪の中でも,収賄事犯は,公務執行の公正に対する国民一般の不信を招き,遵法意識を低下させるなど,その及ぼす影響が深刻かつ広範である。しかし,この種事犯は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられ,特定の被害者が存在しないので,極めて潜在性が強く,その取締りが困難なこともあり,相当数の暗数があると考えられる。このように検挙が困難なため,犯行と検挙の時間的間隔が長くなるので,本項では,長期的にとらえた検挙状況の推移を見ることとする。

I-26表 収賄公務員の所属別検挙人員

 I-26表は,昭和48年から52年までの5年間(以下本節において「前期」という。)と53年から57年までの5年間(以下本節において「後期」という。)にそれぞれ収賄罪で検挙された公務員(いわゆる「みなす公務員」を含む。)を,職種別に,上位10位まで掲げて比較してみたものである。収賄事件の検挙人員総数について見ると,後期は,前期に比べて446人(29.3%)減の1,078人となっている。職種別では,前期,後期とも,4位までを地方公務員が占めており,しかも,1位が土木・建築関係の地方公務員,2位が地方公共団体の各種議員であることも変わらず,この両者が検挙人員総数に占める比率は,前期で48.5%,後期で45.2%に達している。国家公務員について見ると,前期は建設省関係が34人で5位,農林水産省関係が28人で8位,労働省関係が26人で9位であったが,後期は農林水産省関係が25人で6位,郵政省関係が23人で7位となっている。
 最近における収賄事犯の特徴は,依然として各種土木・建設工事等の施行をめぐる事犯及び各種物品資材の購入をめぐる事犯が多いことのほか,賄賂額が高額化していることが挙げられ,昭和57年中に検挙された事件の賄賂総額は,前年より1億7,876万円増の4億110万円で,収賄者1人当たりの収賄額も,前年より100万円増の174万円となっている。
 この種事犯の発生を防止するためには,検挙の徹底を期するとともに,厳正な刑罰を科する必要があると思われる。I-27表は,収賄事件の通常第一審における科刑状況を見たものである。昭和56年に,懲役刑に処せられた者は189人で過去5年間の最高となっている。しかし,懲役1年以上の刑に処せられた者の比率は,2年連続低下して52.4%となり,他方,執行猶予率は95.2%で過去5年間の最高となっている。なお,56年の実刑人員は9人で,懲役2年以上3年未満が5人,1年以上2年未満が4人となっている。

I-27表 収賄事件の通常第一審科刑状況