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 昭和57年版 犯罪白書 第4編/第2章/第3節/2 

2 保護観察の経過

(1) 保護観察の状態の推移
 IV-39表は,調査対象総数356人の保護観察の状態別構成比について,保護観察開始後2年間にわたる推移を見たものである。2年を経過した時点で見ると,引き続き保護観察中の者が69.4%,既に保護観察を終了した者が30.6%の割合となっている。保護観察中の者のうち,良好な状態にある者は,仮解除中め者5.6%と成績良好と評定された者29.8%の合計35.4%である。一方,保護観察を終了した者のうち,死亡による終了(3人)を除く29.8%(106人)が再犯により執行猶予を取り消された者であり,昭和54年中の保護観察付執行猶予者新規受理総人員のうち,判決確定後2年ないし3年を経過した56年末までに執行猶予を取り消された者の占める比率24.9%と比較すると,この種事犯者の執行猶予取消率が高いことを示している。

IV-38表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予者の保護観察開始時の生活状況別構成比

IV-39表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予者の経過期間別保護観察の状態

(2) 執行猶予を取り消された者の再犯罪名及び再犯期間
 IV-40表は,前記執行猶予を取り消された者(106人)について,再犯罪名及び再犯期間を見たものである。再犯罪名について見ると,覚せい剤取締法違反が86人(81.1%)と圧倒的に多い。
 再犯期間について見ると,保護観察開始後3月以内に再犯を行った者が30.2%を占め,6月以内で48.1%,1年以内では75.5%(覚せい剤取締法違反による者は77.9%)にも達している。なお,再犯罪名と再犯期間との関連について見ると,再犯罪名が覚せい剤取締法違反である者の再犯期間は,その他の再犯罪名の者に比べて短い傾向が認められる。

IV-40表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予を取り消された者の再犯罪名別・再犯期間別累積構成比

(3) 執行猶予を取り消された者の特性
 再犯により執行猶予を取り消された者の特性を明らかにするため,前記1の(2)ないし(4)において述べた身上特性,事犯の態様等及び保護観察開始時における生活状況と取消率との関連を見たのがIV-41表である。身上特性について見ると,男性に比べて女性の取消率は著しく低く,また,本件以前の逮捕回数が多い者ほど取消率は高くなっている。暴力団関係では,幹部・構成員・準構成員の取消率が高い。
 事犯の態様等について見ると,譲渡違反者の取消率が著しく高く,また,自己使用者は,自己使用のない者より取消率が高い。本件罪名に覚せい剤取締法違反以外の罪名を有する者の取消率は,覚せい剤取締法違反のみの者より高い。
 保護観察開始時における生活状況について見ると,配偶者又は親・兄弟・姉妹と同居している者の取消率が低く,その他の者との同居者及び単身居住者の取消率は,いずれも高い。職業では,主婦を除くその他の無職者の取消率が著しく高く,また,主婦の取消率18.2%は,女性全体の取消率13,6%を上回っている。生計状況に関しては,貧困の者の取消率が高くなっている。

IV-41表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予者の判決確定後2年以内の取消率