(1) 判決の内容
IV-35表は,裁判所が言い渡した判決の内容について見たものである。初度の執行猶予の言渡しに伴い,裁量的に保護観察に付された者が76.4%を占め,再度の執行猶予の言渡しに伴い,必要的に保護観察に付された者の比率は23.6%である。
本刑の刑期について見ると,6月を超え1年以内の者が最も多く,66.3%を占めている。性別では,1年を超える者の合計は,男性では19.9%であるのに対して,女性では25.4%とやや高くなっている。
執行猶予期間について見ると,3年が54.8%と最も多いが,執行猶予期間が4年以上の者の占める割合は,女性に比べて男性の方が高い。
(2) 身上特性
受理時における主要な身上特性を見ると,IV-36表のとおりである。性別について見ると,女性が16.6%を占めており,昭和54年中の保護観察付執行猶予者新規受理総人員に占める女性の比率7.3%に比べると,2倍以上の高い数値を示している。
年齢について見ると,20歳代及び30歳代が圧倒的に多く,40歳以上の者の占める割合は16.0%にすぎない。特に,女性において30歳代が50.8%と過半数を占めているのが特徴的である。
学歴について見ると,義務教育未修了,義務教育修了及び高校中退の比率の合計は79.8%であり,高校卒業以上の学歴を有する者の割合は2割に満たない。特に,女性における義務教育未修了の比率の高さが目立っている。
IV-36表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予者の身上特性別構成比
本件以前の逮捕歴について見ると,逮捕歴を有する者が71.1%を占め,しかも,逮捕回数3回以上の者が34.6%にも及んでいる。ただし,女性においては,逮捕歴のない者が過半数を占め,逮捕回数3回以上の者の比率も低い。覚せい剤事犯による逮捕歴に限って見ると,逮捕歴を有する者の比率は17.7%であるが,女性の方が男性よりその比率は高い。
暴力団関係について見ると,幹部,構成員又は準構成員として現に暴力団に加入している者の割合は10.1%であり,そのすべてが男性である。これに,元組員,組員の家族,組員と交際のある者などその他の関係者の比率41.3%を加えると,過半数の者が暴力団との関係を有している。
IV-37表 覚せい剤事犯保護観察付執行猶予者の事犯態様等別構成比
(3) 事犯の態様等
IV-37表は,本件覚せい剤事犯の態様,覚せい剤の取扱量及び本件罪名における覚せい剤取締法違反以外の罪名の有無を見たものである。態様について見ると,81.7%の者が自己使用であり,以下,所持が33.7%,譲受が23.0%,譲渡が17.4%の順となっている。
取扱量について見ると,0.06g(平均使用量の2,3回分に当たる。)を超え1g以下の比率が最も高い。性別で見ると,10g以上の多量の覚せい剤を取り扱った者の比率は女性の方が高い。
本件罪名について見ると,覚せい剤取締法違反のみの者が約8割を占め,特に,女性においては9割に近い。
(4) 保護観察開始時の生活状況
IV-38表は,保護観察が開始された当初における生活状況を見たものである。居住態様について見ると,配偶者(内縁を含む。以下同じ。)と同居している者及び親・兄弟・姉妹と同居している者の割合は,それぞれ約4割であり,単身居住者が11.0%となっている。性別では,男性に比べて女性における単身居住者の比率が高く,配偶者と同居している者の比率は低い。
職業について見ると,被雇用者が53.4%と過半数を占めているが,無職の比率も26.4%と高い。女性における無職は52.5%と多いが,このうち,主婦の占める比率は18.6%である。
生計状況について見ると,普通以上が76.4%を占めているが,性別では,男性における貧困の比率19.2%に対して,女性のそれは32.2%と著しく高い。