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4 被疑事件の処理 II-4表は,昭和56年における検察庁処理人員を罪名別に見たものである。処理人員総数は,前年より3万8,468人増加して409万9,206人である。処理区分別に見ると,公判請求が14万819人(3.4%),略式命令請求が212万438人(51.7%),不起訴が28万9,763人(7.1%),家庭裁判所送致が52万5,166人(12.8%)となっている。ここで,中止・移送の中間処分を除いた終局処理について見ると,総数では,307万6,186人となっている。終局処理における各処理区分の比率を見ると,公判請求は前年と同じく4.6%,略式命令請求68.9%(前年は68.8%),不起訴9.4%(同10.2%),家庭裁判所送致17.1%(同16.3%)であり,不起訴の比率が前年より0.8%減少し,家庭裁判所送致の比率が前年より増加している。
II-4表 罪名別検察庁処理人員 (昭和56年) II-5表は,最近5年間における罪種別の起訴率及び起訴猶予率を見たものである。起訴率について見ると,全事件では,昭和56年は88.6%で前年より0.8%上昇している。罪種別では,業過を除く刑法犯が最も低く,道交違反が最も高い。次に,起訴猶予率について見ると,56年は,全事件で9.3%であるが,罪種別では,業過を除く刑法犯が36.1%と最も高く,道交違反が2.5%で最も低くなっている。II-6表は,最近3年間における罪名別の起訴率を見たものである。昭和56年において最も起訴率の高いのは覚せい剤取締法違反の89.3%であり,以下,傷害(81.5%),強盗(79.8%),暴力行為等処罰法違反(78.9%),銃刀法違反(75.7%)の順となっている。覚せい剤取締法違反について起訴率の推移を見ると,50年の75.5%から逐年上昇を続け,56年では前年より更に0.3%上昇して89.3%となっている。次に,殺人の起訴率の推移を見ると,50年は56.9%,51年は61.3%,52年は59.8%,53年は57.9%であり,54年はやや下降して52.4%であったのが,55年は35.3%,56年は38.8%と極端に低い数値となっている。そこで,50年以降について,殺人で不起訴となった者の不起訴理由を見てみると,嫌疑なしの裁定の者は,54年の約25%を除くと,おおむね10%台にすぎなかったのに,55年,56年とも約60%を占めている。その理由は,刑務所に在監中の特定の受刑者が,55年には看守など963人を,56年には,728人を殺人未遂で告訴したため,殺人(未遂を含む。)の受理人員が増加し,しかも,不起訴処分中の嫌疑なしの裁定の者が増加したため,全体として起訴率が低下したものである。ちなみに,この特定の受刑者の告訴に係る事件を除外して起訴率を算出すると,55年では54,3%,56年では52.7%となり,例年と比較しても,大きな変化はない。 II-5表 罪種別起訴率・起訴猶予率(昭和52年〜56年) II-6表 罪名別起訴率(昭和54年〜56年) II-7表は,交通関係業過及び道交違反を除いた昭和56年の公判請求人員を罪名別に多いものから10位までを挙げて見るとともに,当該罪名の過去2年の数値も併せて示したものである。この3年間とも,第1位が窃盗,第2位が覚せい剤取締法違反,第3位が詐欺と変わりはないが,覚せい剤取締法違反の占める比率を見ると,53年の18.7%から逐年上昇を続け,56年では23.6%と約4分の1になっていることは注目に値する。56年においては,前年第6位であった公職選挙法違反が大幅に減少して,10位以下となり,替わって,賭博・富くじが第10位となっている。II-7表 公判請求人員の罪名別構成比(昭和54年〜56年) II-8表 不起訴処分における理由別人員(昭和52年〜56年) 次に,最近5年間における業過及び道交違反を除く不起訴処分人員を理由別に見ると,II-8表のとおりである。昭和56年における不起訴人員総数は11万5,451人で,前年より1万5,175人(11.6%)減少している。起訴猶予の占める比率は,前年よりやや減少して80.0%である。嫌疑なし・不十分は前年より0.8%上昇して,56年は13.4%となっている。心神喪失で不起訴となった者は前年より50人減の498人であるが,比率では前年同様0.4%である。 |