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 昭和57年版 犯罪白書 第1編/第4章/第2節/3 

3 恐喝罪

 I-111表は,恐喝罪について,昭和29年以降の科刑状況及び執行猶予率を見たものである。執行猶予率は,29年及び30年を除き,いずれも50%を超えている。最高は45年の63.9%である。執行猶予者中,保護観察に付される者の比率を見ると,34年から43年までは,おおむね30%を超えていたが,44年以降は20%台に下降し,50年以降は20%未満の年次が多く,長期的には低下している。
 I-112表は,昭和29年以降55年までの各年次に執行猶予の言渡しを受けた者について,保護観察の有無別に,その取消しの状況を見たものである。まず,保護観察付執行猶予について見ると,対象者が20人未満の29年及び30年は,それぞれ,75.0%,46.7%と高い取消率を示しているが,その後は48年まで,おおむね20%台ないし30%台となっていた。しかし,49年に上昇して40%を超え,50年には31年以降の最高である44.4%を記録している,。また,取消しを受けた者のうち,同一罪名(恐喝)による再犯で取り消された者の比率を見ると,全体的には10%台ないし30%台の年次が多い。最高は30年の42.9%である。
 次に,単純執行猶予を言い渡された者について,その取消しの状況を見ると,長期的には,昭和29年の17.3%からおおむね下降傾向を示しているが,44年から上昇に転じ,執行猶予期間未経過の者を含む54年及び55年で,それぞれ,12.2%,12.4%を記録している。また,取消しを受けた者のうち,同一罪名による再犯で取り消された者の比率を見ると,40年以前は20%を超えている年次が多いが,41年から51年までは,やや下降して10%台の年次が多い。しかし,52年以降54年までは,再び20%を超えている。同一罪名以外で取り消される者では,傷害罪,窃盗罪が比較的多いが,48年以降では,覚せい剤取締法違反が多くなり,各年次とも,おおむね15%ないし20%となっている。

I-111表 恐喝事犯者の科刑状況及び執行猶予率(昭和29年〜56年)

I-112表 恐喝事犯者の執行猶予取消人員及び取消率(昭和29年〜55年)

 保護観察付執行猶予と単純執行猶予を比べると,取消率は,前者が後者をはるかに上回っている。