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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第1章/第3節/2 

2 家庭内暴力

 少年による粗暴犯の一形態として,家庭内暴力事件が社会の関心を集めている。以下,警察庁の資料に基づき,家庭内暴力事件の状況を見ることとする。
 まず,全国的な数字を見ると,昭和55年中に,少年相談や少年の補導活動を通じて警察かは握した家庭内暴力少年は1,025人である。これら家庭内暴力少年のうち,男子は902人で88.0%を占め,女子は123人(12.0%)である。
 IV-10図は,家庭内暴力を類型化したものであるが,第一の類型は,「家庭内暴力のみ」が現われる純粋な意味での家庭内暴力で,その対象もすべて家庭内に限られており,1,025人のうち,424人(41.4%)と最も多い。
 第二の類型は,「家庭内暴力及び登校拒否」の問題性を示すもので,178人(17.4%)となっている。これは,親を困らせるものとして登校拒否が現われている場合もあるが,無理に登校させようとすると親などに暴力を振るったりするものである。
 第三の類型は,「家庭内暴力,登校拒否,及び不良行為・非行」が同時に現われているもので,不良交友,夜遊び,無断外泊などの非行がかなり目立っており,135人(13.2%)となっている。
 第四の類型は,「家庭内暴力及び不良行為・非行」が現われているもので,家庭内暴力より先に非行があり,それを注意した親などに暴力な振るっているもので,288人(28.1%)となっている。

IV-10図 家庭内暴力の類型別構成比(昭和55年)

IV-11図 家庭内暴力の対象別構成比(昭和55年)

 家庭内暴力の内容について見ると,IV-11図のとおりである。暴力の対象となる者は,母親が最も多く628人(61.3%),次いで,父親に対するものが163人(15.9%)である。また,暴力は,ほとんど殴る,ける等の単純な暴行であるが,中には凶器等を使用して暴行,脅迫に及んだものもある。
 家庭内暴力の原因・動機について見ると,最も多いものは,親のしつけ・生活態度に反発してというもので457人(44.6%)であり,次いで,非行をとがめられてか247人(24.1%),物品購入の要求が受け入れられず暴力に及んだものが122人(11.9%),理由もなくか107人(10.4%),受験勉強をうるさくいわれてが53人(5.2%)などとなっている。
 家庭内暴力少年の両親の養育態度について見ると,IV-12図のとおり,両親の放任,母親の過干渉・過保護が目立っている。

IV-12図 父母の養育態度別構成比(昭和55年)