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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第1章/第3節/1 

第3節 特殊な非行

1 学校内暴力

(1) 概  況
 IV-7図は,昭和50年以降における学校内暴力事件の補導人員の推移を見たものである。55年の中学生の補導人員は,7,108人で,50年の1.6倍に達し,前年に比べても,1,967人,38.3%の大幅な増加となっている。一方,高校生の補導人員は,50年以降おおむね横ばい傾向にあるが,55年の1,950人は,前年に比べて,372人,23.6%の増加である。この結果,補導人員中に占める中学生の割合は,50年から53年までの間,60%台であったが,54年に79.5%,55年に78.5%と急増している。
 次に,学校内暴力事件のうち,教師に対する暴力事件について,昭和50年以降における推移を見たものが,IV-19表である。まず,中学生による事件について,50年と55年を比べると,認知件数は119件から372件へ3.1倍に,被害教師数は149人から503人へ3.4倍に,補導人員は240人から763人へ3.2倍に,それぞれ著しく増加している。一方,高校生について見ると,認知件数及び被害教師数は,多少の増減はあるものの,おおむね一定しており,55年では22件,29人であるが,補導人員は,50年の68人から55年の35人へ減少している。この結果,55年における中学生と高校生の補導人員の比率は,中学生が95.6%であるのに対して,高校生は4.4%にとどまり,最近における教師に対する暴力事件は,中学生に集中していると言えよう。

IV-7図 学校内暴力事件の補導人員(昭和50年〜55年)

IV-19表 中学生・高校生による教師に対する暴力事件の補導状況(昭和50年〜55年)

 IV-8図は,最近4年間における教師に対する暴力事件の地域別認知件数の比率の推移を見たものである。昭和52年には,近畿地方が68.4%と過半数を占めていたが,55年には37.3%と減少し,一方,その他の地方及び東京の比率が増加して,55年にはそれぞれ34.0%及び18.3%となり,この種事件の全国的な拡散傾向を示している。
(2) 中学生による学校内暴力事件の特質等
 IV-9図は,昭和55年における中学生による教師に対する暴力事件372件について,その原因・動機を見たものである。最も多いものは,教師の注意あるいは厳しいしつけへの反発・仕返し284件(76.3%)であり,次いで威勢の誇示46件(12.4%),生徒指導・授業のあり方に反発28件(7.5%)などとなっている。

IV-8図 教師に対する暴力事件の地域別認知件数構成比(昭和52年〜55年)

IV-9図 中学生による教師に対する暴力事件の原因・動機別構成比(昭和55年)

 次に,昭和55年中に全国の検察庁で処理した中学生による学校内暴力事件で,法務省刑事局に報告のあった809人について,事件態様別に送致歴の有無及び回数を見ると,IV-20表のとおりである(ここでの送致とは,地方検察庁から家庭裁判所への事件送致をいう。)。送致歴のある中学生は,教師に対する暴力事件の43.6%が最も多く,次いで施設等の損壊事件の33.3%,生徒に対する暴力事件の25.8%の順になっている。また,送致回数が2回の者及び3回以上の者の比率は,教師に対する暴力事件においてそれぞれ8.9%及び9.8%で,他の事件態様よりも高く,この種事件が送致歴の多い中学生によって行われていることがうかがわれる。

IV-20表 中学生による学校内暴力事件の事件態様別送致歴の有無・回数別人員構成比(昭和55年)

 学校内暴力のみの事件によって少年院へ送致され,昭和55年12月末日現在収容中の中学在学少年は14人である。学校内暴力事件及びその他の事件により収容中の中学及び高校在学少年は,同日現在58人であった(法務省矯正局調べ)。こうした状況に対して,播磨少年院では,学校内暴力事件等による中学及び高校在学少年を対象とした特修科を設け,1,2か月程度の院内における生活指号と学力補習教育を行った後に,在宅での約2か月の出身学校への通学を組み合わせた短期処遇を試行している。
 また,学校内暴力事件により保護観察中の中学在学少年は,昭和56年1月末日現在,188人(うち,1号観察が176人,2号観察が12人)で,交通及び交通短期を除く対象少年の0.6%に当たる(法務省保護局調べ)。