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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第1章/第3節/3 

3 暴走族

 暴走族は,昭和30年代初めの「カミナリ族」に端を発すると言われるが,その後のモータリゼーションの急激な進展に伴い,次第にその数を増加した。40年代後半からは,大規模な暴走族集団が出現し始め,単なる暴走行為にとどまらず,凶器を用いた暴走族グループ間の対立抗争や,一般市民を巻き込んだり,取締警察官に対する暴力事件を反復し,悪質な非行集団としての性格を強めてきた。こうした状況に対して,53年12月から,道路交通法の一部改正によって,暴走族に対する法的規制が強化されることとなった。この結果,暴走族の動きは,一時静まる気配をみせたが,その後,再び活発化し,従前にも増して悪質,粗暴な行動を繰り広げ,社会の注目を集めている。

IV-21表 暴走族のグループ数・構成員数及び構成員中に占める少年の比率(昭和51年〜55年)

 IV-21表は,最近5年間における暴走族のグループ数,構成員数及び構成員中に占める少年の比率を示したものである。グループ数は,昭和54年までは500グループを超えることはなかったが,55年11月末現在で754グループとなっており,構成員数は3万8,952人と過去最高の人員となっている。また,構成員中に占める少年の比率は,51年11月末に63.2%であったものが,55年11月末には80.6%となり,暴走族に占める少年の比率は著しく高い。
 IV-22表は,最近3年間における暴走族の年齢層別及び学職別構成比を見たものである。年齢層別に見ると,20歳・21歳及び22歳以上の者の占める比率が下降し,16歳・17歳及び15歳以下の者の占める比率が上昇している。特に,免許取得のできない15歳以下の者の占める比率が,昭和55年には53年の2.7倍となっていることが注目される。学職別に見ると,無職の者の占める比率が上昇し,有職の者の占める比率が下降している。しかしながら,有職の者の占める比率は,最も低い54年においても51.9%で,暴走族の半数以上は,有職の者によって占められている。なお,学生・生徒の8割以上は,高校生である。

IV-22表 暴走族の年齢層別・学職別構成比

IV-23表 暴走族少年に対する検挙・補導状況(昭和53年〜55年)

 IV-23表は,最近3年間における暴走族少年に対する検挙(補導)状況を示したものである。昭和55年における刑法犯検挙少年数は7,891人で前年よりも2,224人の増加,特別法犯は2,860人で1,681人の増加,虞犯・不良行為少年は3万1,643人で1万4,215人の増加となっている。また,刑法犯のうち,殺人,強盗,強姦,放火の凶悪犯が422人(前年は220人で91.8%増),傷害,暴行,脅迫,恐喝及び凶器準備集合の粗暴犯が3,161人(前年は1,778人で77.8%増)となっており,暴走族による非行の凶悪化,粗暴化が顕著である。これらを55年における少年凶悪犯全体の検挙人員1,930人及び粗暴犯全体の検挙人員2万1,434人と対比すると,暴走族少年は,凶悪犯中21.9%,粗暴犯中14.7%を占めている。この比率は前年より,いずれも,凶悪犯で9.1%,粗暴犯で4.5%上昇している。
 暴走族は,法的規制及び取締りの強化にもかかわらず,グループ数,構成員数共に著しく増加しており,しかも,16歳・17歳及び15歳以下の者の占める比率の上昇に見られるような低年齢化傾向と,凶悪犯,粗暴犯の増加に見られるような行動面における悪質,粗暴化傾向が顕著に認められ,今後の動向には楽観を許さないものがある。