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 昭和56年版 犯罪白書 第1編/第4章/第2節/3 

3 罰金刑の罪名別量刑の推移

 第二次世界大戦後における経済事情の変動に伴い,罰金刑に関し,昭和23年に罰金等臨時措置法が制定され,24年2月1日から,刑法の罪等の罰金額の多額が50倍に引き上げられ,更に,同法の改正により47年7月1日からこれが200倍に引き上げられて現在に至っている。
 I-95表は,昭和31年以降における傷害,暴行,賭博(富くじ発売等を含む。以下同じ。)及び業務上過失致死傷について,年次別の平均罰金額を見たものである。47年6月30日以前の罰金の上限は,傷害及び暴行が2万5,000円,賭博が15万円,業務上過失致死傷が5万円であり,47年7月1日以降は,傷害及び暴行が10万円,賭博が60万円,業務上過失致死傷が20万円となっている。傷害について見ると,31年の3,500円から一貫して増加し,前記法改正前の46年では1万3,600円となっていたが,その後の47年では1万8,300円,48年では3万1,000円に急増した。その後も逐年増加し,55年では5万500円となっている。31年を100とする指数で見ると,55年は1,443であり,法改正後の48年を100とする指数では,55年は163となっている。暴行について見ると,31年の2,300円から逐年増加し,前記法改正前の46年で9,300円となったが,47年では1万3,100円,48年では1万9,900円に急増し,その後も増加を続けて,55年では3万1,200円となっている。31年を100とする指数で見ると,55年は1,357,48年を100とする指数では,55年は157となっている。賭博について見ると,31年から35年までは起伏はあるが3,000円台であったのが,36年からおおむね増加を続け,前記法改正前の46年に1万7,700円となり,その後,52年の5万8,900円まで増加を続けたが,53年,54年は減少している。しかし,55年は再び増加し,5万8,300円と52年に近い数値となっている。31年を100とする指数で見ると,55年は1,822,48年を100とする指数では,55年は151となっている。業務上過失致死について見ると,31年の1万8,600円からおおむね上昇を続け,41年から46年までは4万4,000円台であったが,前記法改正により,罰金の上限が引き上げられたため,47年では4万8,900円に上昇し,48年では,11万600円へと2倍以上に急増している。その後も52年を除いて上昇を続け,55年では15万6,000円となっている。31年を100とする指数で見ると,55年は839と8倍を超えている。また,法改正後の48年を100とする指数では,55年は141となっている。業務上過失致傷について見ると,31年の6,200円から45年の1万9,800円まで逐年増加し,46年にやや減少した。法改正のあった47年では2万4,000円であったが,48年には4万2,900円へと急増し,53年まで逐年増加したが,54年は5万1,100円,55年は5万1,600円と53年よりやや減少している。31年を100とする指数で見ると,55年は832であり,48年を100とする指数では,55年は120である。

I-95表 罪名別平均罰金額の推移(昭和31年〜55年)