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 昭和56年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/3 

3 暴力団関係者の検察庁処理状況

 I-27表は,昭和55年における交通関係業過及び道交違反を除く検察庁処理人員中,暴力団関係者の逮捕・勾留の状況を罪名別に見たものである。逮捕関係について見ると,総数では,暴力団関係者の身柄率,すなわち,暴力団関係者の既済人員のうち,警察で逮捕後検察庁に身柄送致したもの及び検察庁で逮捕したものの比率は66.7%であり,全既済人員の身柄率の20.0%に比べ3倍以上の高率となっている。罪名別の身柄率を見ても,殺人の90.3%を最高に,以下,恐喝の81.1%,傷害の76.4%,暴力行為等処罰法違反の72.9%と続いており,I-27表に掲げた罪名のすべてで50%を超えている。勾留関係について見ると,総数では,暴力団関係者の身柄事件の勾留請求率は94.3%であり,全人員の80.5%を大幅に上回っている。罪名別に見ても,殺人及び売春防止法違反の各100.0%を最高に,いずれも90%を超えている。

I-27表 暴力団関係者の罪名別検察庁既済事件の逮捕・勾留別人員                    (昭和55年)

I-28表 暴力団関係者の罪名別起訴率及び起訴猶予率(昭和55年)

 I-28表は,昭和55年における交通関係業過及び道交違反を除く検察庁の処理状況を見たものである。起訴及び不起訴人員総数は1万7,229人で,そのうち起訴人員は1万4,555人(起訴率84.5%),起訴猶予人員1,633人(起訴猶予率10.1%)となっている。前年と比較すると,起訴率は0.8%減少し,起訴猶予率は0.7%増加している。55年における全既済人員の起訴率は64.2%,起訴猶予率は30.9%であり,暴力団関係者と全人員とを比較すると,起訴率は暴力団関係者が大幅に上回り,起訴猶予率は全人員が大幅に上回っている。罪名別に見ると,I-28表に掲げた罪名のほとんどが,起訴率において暴力団関係者の方が全人員よりも高く,かつ,起訴猶予率は低くなっている。公判請求率について見ると,総数では,暴力団関係者の75.5%に対し,全人員は49.0%となっており,暴力団関係者が全人員を大幅に上回っている。
 このように,暴力団関係者の身柄率,起訴率及び公判請求率が全人員より高く,起訴猶予率が低いのは,暴力団関係者には累犯者が多いことに加え,警察,検察庁において暴力団関係者に対し,厳しい姿勢で臨んでいることを示すものであろう。