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 昭和55年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/3 

3 少年の更生保護

 昭和24年7月に犯罪者予防更生法が施行された当初は,保護観察の対象は,家庭裁判所の決定により保護観察に付された者,少年院から仮退院を許されている者,仮出獄を許されている者,18歳に満たないとき懲役又は禁餌につき刑の執行猶予の言渡しを受けて猶予中の者の4種類であって,仮出獄中の者を除く対象は少年であったが,28年及び29年の二度にわたり刑法の一部が改正されて,成人で刑の執行を猶予された者も保護観察に付されることとなった。また,保護観察の実施体制についても,犯罪者予防更生法の施行当初は,青少年と成人に分けることとし,23歳未満の青少年の保護観察は地方少年保護委員会が実施することとしていたが,27年に犯罪者予防更生法の一部が改正されて,青少年と成人とに区別することを廃止するとともに,保護観察所が保護観察を実施することになった。
 もともと,保護観察は,保護観察に付されている者に対し,遵守事項を遵守するように指導監督するとともに,本人に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護することによって,その改善及び更生を図るものであるから,処遇の原則においては,少年と成人とによって区別されるものではない。したがって,少年に対する保護観察においても,保護観察官と保護司との協働態勢の下に,分類処遇制度を基本とした処遇が行われているが,少年に対しては,その特性と将来性を考慮して,いろいろな処遇方策が試みられている。
 少年に対する保護観察の新しい処遇方策としては,昭和49年4月,東京・大阪の両保護観察所において,保護観察官による直接処遇が開始され,対象者の問題性に応じた効果的な処遇技法の開発・検討が進められているが,52年4月からは,交通短期保護観察制度が全国的に開始された。この制度は,交通事件により家庭裁判所において保護観察に付された少年のうち,特に相当と認められた者について,保護観察官による集団処遇を中心とした特別の処遇を集中的に実施した上,特段の支障がない限り,短期間の経過をもって保護観察を解除することとし,これにより遵法精神のかん養,安全運転に関する知識の向上及び安全運転態度の形成を図ることとしている。更冫こ,最近,保護観察官の集団処遇技法が向上したことに伴い,一部の庁においては,薬物犯罪により保護観察処分に付された少年に対しても保護観察官による集団処遇が実施され,集団の相互作用による処遇効果に期待が寄せられている。
 少年に対する保護観察においては,友達の立場からの青年や,母親の立場からの婦人の協力が効果的と考えられる。非行少年の友達となり,兄姉の立場においてその更生を助けようとする青年運動がBBS運動であって,我が国においては,昭和21年9月に京都の学生たちによって始められ,その後,全国各地に広がったが,25年には,都府県単位の組織をもって構成された全国BBS運動団体連絡協議会が結成され,更に,この連絡協議会は,27年に日本BBS連盟となり,各地のBBS運動の発展に指導的役割を果たしている。BBSの会員は,保護観察所からの依頼に基づいて,保護観察に付されている少年の友達となり,保護司の行う処遇を助けているが,その他,児童相談所,家庭裁判所,警察,学校等の依頼も受けて友達活動を行っている。
 婦人の立場から更生保護に協力することを目的とする有志婦人の団体が更生保護婦人会であって,犯罪者予防更生法が施行されて以降,婦人保護司を中核に地区単位で組織化が進められ,逐次,県単位,地方単位の組織が整備され,昭和39年に全国組織である全国更生保護婦人協議会が結成されたが,この協議会は,44年に全国更生保護婦人連盟と改称された。更生保護婦人会の会員は,保護観察対象者に対する援助も行っているが,犯罪予防のための啓発,更生保護会在会者の援助,矯正施設収容者の援助等多彩な活動を展開している。
 以上見てきたとおり,非行少年の処遇については,最近,少年矯正の分野において,少年院運営の改善が実施され,更生保護の分野においても,交通短期保護観察が実施に移されている。矯正及び更生保護の分野におけるこのような施策は,最近の少年非行の動向や時代思潮の要請にかんがみ,現行法のわく内において,処遇を多様化・弾力化することにより,非行少年に対する処遇効果を一層高めようとするものである。
 昭和52年6月29日,法制審議会から法務大臣に対し少年法の改正について答申がなされたが,その答申の中で,保護処分の多様化及び弾力化を図るものとすることとしている。その内容は,保護処分の種類を現行の保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致の3種類から,短期保護観察,保護観察短期少年院送致,少年院送致,短期開放施設送致,教護院・養護施設送致の6種類とすることによって,より一層個別的かつ効果的な処遇を図り得ることとするとともに,保護観察等の付随措置の新設,保護処分執行中の行状を理由とする家庭裁判所への通告の制度の新設,保護処分の期間延長等に関する規定の新設により,保護処分の弾力的運用を図ろうとするものである。