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 昭和55年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/1 

第2章 非行少年の処遇

第1節 少年事件の検察・裁判

1 少年検察

 III-31表は,昭和40年,45年,50年,53年及び54年における業過及び道交違反を除く少年被疑事件の検察庁新規受理人員を罪種別,年齢層別に示したものである。54年の新規受理人員は,刑法犯,特別法犯とも前年より増加し,総数で前年より8,773人増の15万3,143人となっている。54年における罪種別内訳を見ると,刑法犯中の財産犯が12万333人で,総数の78.6%を占めている。54年の年齢層別構成比について見ると,年少少年(14歳・15歳をいう。以下本節において同じ。)が,総数で37.9%,刑法犯で39.4%となり,中間少年(16歳・17歳をいう。以下本節において同じ。)のそれぞれ37.8%,38.0%を超えて首位を占めるに至り,年少少年の増加,すなわち,非行の低年齢化が顕著に現れている。これを罪種別に見ると,財産犯では年少少年が41.9%,粗暴犯では中間少年が36.5%,凶悪犯及び特別法犯では年長少年(18歳・19歳をいう。以下本節において同じ。)が前者で42.9%,後者で58・1%とそれぞれ多数を占めており,罪種によって相違が認められる。54年においては,前年まで減少傾向にあった凶悪犯及び粗暴犯も増加を示すなど,すべての罪種で前年より増加している。
 成人を含めた検察庁の業過及び道交違反を除く新規受理人員中に占める少年被疑事件の比率を見ると,総数では,昭和52年が24.2%,53年が27.8%,54年が27.9%と逐年上昇しており,刑法犯では,54年は前年より3.7%増の40.5%となっている。罪種別に前年と比べて見ても,54年は,凶悪犯では前年より1.0%増の21.7%,粗暴犯では2.4%増の26.5%,財産犯では3.9%増の51.2%といずれも上昇している。特別法犯を見ると,54年は,総数では前年より0.4%減の4.0%であるが,覚せい剤取締法違反は,前年より435人(28.2%)増の1,975人と大幅な増加を示し,同違反の新規受理人員総数中に占める比率も,前年より1.2%増の6.7%になっている。

III-31表 犯罪少年の罪種別・年齢層別検察庁新規受理人員

 検察官の行う少年被疑事件の処理について見ると,その大部分は家庭裁判所送致であり,その際,検察官は,少年の処遇に関して意見を付することかできるが,昭和54年における過失傷害(過失致死及び業過を含む。)及び道路交通法違反を除く家庭裁判所終局処理人員について,検察官の処遇意見と家庭裁判所の処理結果とを罪種別,年齢層別に対比して見たのが,III-32表である。検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と家庭裁判所の処理結果とを比べると,ほとんどすべての罪種及び年齢層において,検察官の付した意見が家庭裁判所の処理結果の比率を上回っている。年長少年の総数について見ると,検察官送致においては,検察官の付した意見の比率が7.8%であるのに対し,家庭裁判所の処理結果では2.5%となっており,少年院送致では,検察官の意見の14.5%に対して家庭裁判所の処理結果では7.1%,保護観察では,検察官の意見の24.4%に対して家庭裁判所の処理結果では15.4%となっている。
 III-33表は,家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,昭和54年における検察庁処理状況を罪名別に示したものである。起訴人員総数は,前年より350人減少して3万4,404人であり,そのうち,3万3,912人(98.6%)が業過又は道交違反によるものである。起訴のうち96.9%に当たる3万3,351人は略式手続によって処理されており,公判請求人員は1,053人(前年は944人)にとどまっているが,公判請求率は,前年の2.7%より0.4%上昇して3.1%となっている。公判請求人員のうち業過が52.4%を占め,道交違反及び窃盗が各8.2%,覚せい剤取締法違反及び傷害が各4.3%でこれに続いている。54年においては,殺人で22人が起訴されており,これは前年の6人を大きく上回るもので注目に値する。また,覚せい剤取締法違反の起訴人員も,前年の33人から45人に増加している。

III-32表 罪種別・年齢層別検察官処遇意見及び家庭裁判所処理結果の構成比

III-33表 逆送少年の罪名別検察庁処理人員