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 昭和55年版 犯罪白書 第2編/第1章 

第2編 犯罪者の処遇

第1章 概  説

 本編では,警察等によって検挙された犯罪者が,その後,検察・裁判・矯正・更生保護の各段階で受ける処遇の実情を紹介するが,その理解を容易にするため,犯人の検挙に始まり社会復帰で終わる広い意味での刑事司法における犯罪者処遇の流れを,II-1図によって説明する。
1 成人事件
 警察等第一次捜査機関は,犯人を検挙すると必要な捜査をなし,微罪処分(犯罪事実が極めて軽微で処罰を必要としないと明らかに認められる事件について,検察官が司法警察員にその処分を委任したもの。)及び交通反則通告制度による反則金の納付のあった事件を除き,事件を検察官に送致する。このほか,検察官が自ら事件を認知し,又は告訴・告発を受けて捜査することがある。検察官は捜査を遂げた上,犯罪の成否,証拠の内容,処罰の要否,その他諸般の情状を考慮して,起訴するか又は不起訴にするかを決める。裁判所に起訴された事件は,略式手続による場合は,簡易・迅速な書面審理によって罰金・科料の決定がなされ,公判手続による場合は,公判が開かれて裁判が行われる。裁判の結果は,死刑,自由刑(懲役,禁銅及び拘留を言う。)の実刑,懲役・禁銅・罰金刑の保護観察付執行猶予又は単純(保護観察が付かない。)執行猶予,罰金・科料,無罪・公訴棄却等に大別される。有罪裁判が確定すると,自由刑及び罰金刑は執行猶予に付されない限り,刑が執行される。なお,罰金・科料の裁判が確定したのに,これを完納することができない者は,換刑処分として,一定期間労役場に留置される。自由刑の実刑が確定した者は,刑の執行として,刑務所等の矯正施設に収容される。矯正施設における行刑は,自由刑の執行を通じて矯正処遇を行い,受刑者の改善更生と社会復帰を図ることを目的としている。受刑者は,刑期の満了によって釈放され,社会に復帰するが,刑期の満了前であっても,地方更生保護委員会の決定によって仮釈放(懲役・禁銅においては仮出獄,拘留においては仮出場)が許可される。仮出獄者は保護観察に付され,保護観察官及び保護司の指導監督の下で,改善更生と再社会化が図られる。なお,売春防止法違反で補導処分に付された成人の女子は,婦人補導院に収容されるが,仮退院が許可されると,保護観察に付される。

II-1図 刑事司法における犯罪者処遇の流れ

2 少年事件
 少年(20歳に満たない者)の事件については,警察等は,事件を検察官に送致しなければならないことは成人事件の場合と同様であるが,罰金以下の刑に当たる事件及び虞犯事件で家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,直接家庭裁判所に送致する。少年事件の送致を受けた検察官は,犯罪の嫌疑があると思料する限り,すべて事件を家庭裁判所に送致する。家庭裁判所における少年事件の審判は,保護処分優先の原則に基づいて行われる。調査の結果,審判を開始しない場合は不開始,審判を開始したときは,不処分,保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致,検察官送致等の決定がなされる。なお,18歳未満の少年の事件については,知事又は児童相談所長に送致されることがある。保護観察は,少年を矯正施設に収容することなく,更生保護機関の社会内処遇によって少年の改善更生を図る処分である。少年院送致及び教護院等送致を受けた少年は,少年院又は教護院等に収容される。これに対し,検察官送致は,刑事処分を相当として事件を検察官に送致する処分であり,これを受理した検察官は,成人事件と同様の手続によって少年を起訴する。裁判の結果,懲役・禁錮の実刑判決が確定した少年は,少年刑務所に収容される。なお,少年院又は少年刑務所収容中に仮釈放を許可された者は,保護観察に付される。
 保護観察は,以上のように,保護観察処分少年,少年院仮退院者,仮出獄者,保護観察付執行猶予者及び婦人補導院仮退院者という5種類の対象者に対して行われるが,保護観察中の再犯又は遵守事項違反等によって,矯正施設に収容されることがある。
 このほか,II-1図には表示していないが,未決勾留中の被疑者・被告人を収容する拘置所及び観護措置に付された少年を収容する少年鑑別所がある。