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 昭和54年版 犯罪白書 第4編/第2章/第3節/1 

第3節 暴力団関係者の更生保護

1 仮出獄

 暴力団関係の受刑者であっても,組織から離脱して正業に従事することを決意し,仮出獄許可の基準に該当していると認められる者は,仮出獄の対象となり得る。しかし,暴力団関係者の場合,刑務所長から仮出獄を申請される割合が低く,また,仮出獄の審理の対象とはされても,刑務所内の規律違反等によって仮出獄申請を取り下げられる場合も多い。審理決定にあっては,棄却される割合が高く,仮出獄を許可されるにしても,刑の執行率(執行すべき刑期に対する,仮出獄までに執行済みの刑期の比率)が一般の仮出獄者より高い。IV-19表は,昭和52年及び53年について,新受刑者中に占める暴力団関係者の比率と,地方更生保護委員会の審理既済総数のうちに占める暴力団関係者の比率とを対比したものである。両年とも暴力団関係者が前者の場合20%以上であるのに対し,後者の場合では11%に満たない。したがって,暴力団関係者は,仮出獄の申請段階で既にふるいに掛けられていると言えよう。

IV-19表 仮出獄審理事件中暴力団関係者の占める率(昭和52年,53年)

IV-20表 仮出獄申請取下げ状況

IV-21表 暴力団関係者に対する仮出獄許否状況

 暴力団関係者に関する仮出獄審理の状況を見るため,昭和53年の審理既済事件から無作為抽出によって得られた1,693人について,暴力団関係者とそれ以外の者とを比較して見ることとする。IV-20表は,累犯・非累犯の別に,暴力団関係者とそれ以外の者との仮出獄申請の取下げ状況を比較したものである。累犯者の場合,暴力団関係者の取下げ率はそれ以外の者の取下げ率とほぼ同じであるが,非累犯者の場合,暴力団関係者の取下げ率は8.7%であって,それ以外の者の2.2%をかなり上回っている。暴力団関係者とそれ以外の者について,累犯・非累犯の別に仮出獄許否状況を比較すると,IV-21表のとおりである。暴力団関係者以外の者の場合,仮出獄申請の棄却率は,非累犯において3.4%,累犯において19.0%であるが,暴力団関係者の場合,非累犯において8.8%,累犯において27.1%といずれも前者を相当上回っている。IV-22表は,仮出獄を許された暴力団関係者とそれ以外の者とについて,刑の執行率の段階別に構成比を見たものである。暴力団関係者にあっては,それ以外の者の場合に比し,執行率90%以上はもとより,同80%以上の合計においても,その割合が高い,執行すべき刑期の長さは各人が同じでないので,単純な比較はできないが,暴力団関係者の執行率が他の者より概して高いということは,この種の者に矯正教育を浸透させることが困難で,仮出獄相当の状態にまで至らしめるには,他の者より長い矯正教育の期間を要し,また,帰住予定先の環境の調整にも期間を要するものと言えよう。

IV-22表 仮出獄を許可された暴力団関係者等の刑の執行率