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 昭和54年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/1 

第2節 少年鑑別所における観護・鑑別

1 概  況

 少年鑑別所は,家庭裁判所の観護措置の決定によって送致された少年を短期間(最長4週間)収容し,この間に,家庭裁判所が行う少年の調査及び審判並びにその後の保護処分の執行に活用するために,医学,心理学,教育学,社会学等の専門的知識に基づいて,少年の資質の鑑別を行う施設であり,全国52箇所(うち,支所1)に設置されている。少年鑑別所の収容は,上記の観護の措置によるほか,勾留に代わる観護の措置,勾留,仮収容,留置等多様な形態があるが,観護の措置による場合が最も多く,昭和53年における新収容少年の91.0%を占めている。
 III-2図は,収容少年に対する一般的な鑑別手続を示したものである。鑑別の具体的方法には,面接,生育史等の資料の調査,心理検査,精神及び身体医学的診断,行動観察等がある。このほかに,「探索処遇」の方法が,最近多くの少年鑑別所で注目され,実施されるようになっている。これは,収容少年の特性に応じて,各種の処遇技法,例えば,カウンセリング,集団討議法,心理劇等を選択的に実施し,その働き掛けに対する少年個々の反応から,少年の生の姿をとらえ,その結果を鑑別判定に反映させるとともに,保護処分決定後の処遇方針にも役立てようとするものである。

III-2図 少年鑑別所における鑑別の手続(収容鑑別)

 こうして作成された「鑑別結果通知書」は家庭裁判所へ,「少年簿」は少年院や保護観察所へ送付されるが,これらは単なる心身のみの検査結果ではなく,少年が非行に至った経緯及び問題点を分析し,その改善のための最も有効適切な科学的処遇の方針を与えることを内容としている。
 また,鑑別の対象は,収容少年に限らず,在宅のまま家庭裁判所に事件が係属している少年,少年院や保護観察所,検察庁から依頼を受けた少年.更に一般家庭や学校からの依頼による少年等の多くの種類がある。
 このように,少年鑑別所の鑑別機能は,家庭裁判所の需要にこたえるばかりでなく,社会の青少年と直接かかわることによって得られた知見を少年矯正にもたらし,更に地域の青少年健全育成センターとして非行防止に貢献するなど,他の矯正施設に見られない特徴を持っている。