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 昭和54年版 犯罪白書 第2編/第3章/第4節 

第4節 更生保護会

 更生保護会は,法務大臣の認可を受けて更生保護事業を行う民間の団体であり,宿泊保護等の直接の保護事業を行うものと,これを指導,連絡又は助成等をする連絡助成事業を行うものとの二種類がある。昭和53年末現在において,直接保護事業を行っている更生保護会は105団体(106施設),連絡助成保護事業を行っている更生保護会は59団体である。
 直接保護事業を行う更生保護会の保護施設(以下「更生保護会」という。)には,成人を対象とするもの,青少年を対象とするもの及び両者を対象とするものがあり,また,男子若しくは女子のみ又は男女共に収容するものとがあるが,これらの種類別施設数は,II-76表に示すとおりである。
 更生保護会は,更生緊急保護の対象者又は保護観察中の者で保護観察所から委託された者のほか,家庭裁判所から補導委託された者の保護を行うとともに,更生保護会自らの判断で保護を行う場合(以下「任意保護」という。)もある。任意保護は,予算上又は法律上の理由により国の委託には制限があるところから,国の委託がない場合において,宿泊等の保護を行う必要があると更生保護会が判断した者について行われている。

II-76表 更生保護会の種類別保護施設数(昭和53年12月31日現在)

 昭和53年4月1日から54年3月31日までの1年間において収容保護した人員は,延べ53万6,847人に上り,その内訳は,国の委託による保護が44万2,436人,任意保護が9万4,411人である。

II-77表 更生保護会在会者の事件種別・年齢層別人員(昭和54年2月15日現在)

 更生保護会には,収容定員に応じた補導職員が置かれ,食事の給与,就職の援助,家族関係等環境の改善などとともに,規則正しい日常生活を通じての生活指導等が行われている。
 法務総合研究所では,更生保護会に収容されている者(以下「在会者」という。)の実態を明らかにするため,昭和54年2月15日現在の在会者全員について調査を行った。
 調査日現在における在会者数は1,480人で,男子1,444人,女子36人である。これらの者を事件種別・年齢層別に見るとII-77表のとおりである。事件種別では,仮出獄中の者が最も多く528人で35.7%を占め,次いで,仮出獄又は少年院を仮退院し仮出獄期間又は少年院仮退院期間を満了している仮釈放終了者の362人(24.5%),満期釈放者の263人(17.8%),保護観察付執行猶予者の112人(7.6%)の順となっており,以上で85.5%を占め,以下,起訴猶予者,少年院仮退院者,執行猶予者,家庭裁判所からの補導委託の少年,保護観察処分少年の順となっている。年齢層別構成では,30歳代及び40歳代の者がそれぞれ421人(28.4%)であり,普通であれば,家族を持ち,生計維持の責任者であるはずの壮年層の者が,全体の約57%を占めている。なお,50歳以上の者が307人(20.7%)を占めており,20歳未満の者は90人(6.1%)にすぎない。
 II-78表は,在会者の刑務所入所度数別年齢層別構成を見たものである。入所度数1度ないし5度の者が948人(64.1%),6度以上の者が264人(17.8%)であって,刑務所入所経験者が大多数を占め,入所経験のない者はわずか257人(17.4%)にすぎない。先に30歳代と40歳代との者で約57%を占めることを見たが,入所度数別でこれらの者の占める比率を見ると,1度ないし2度の者にあっては総数が605人のところ372人いて61.5%を占め,3度ないし5度の者にあっては総数343人中238人で69.4%をも占めている。

II-78表 更生保護会在会者の刑務所入所度数別・年齢層別人員(昭和54年2月15日現在)

 次に,在会者の犯罪又は非行名の構成比を見ると,II-79表のとおりである。窃盗が60.3%,詐欺が12.9%で,財産犯が大部分を占めるものの,強盗(3.9%)及び殺人(3.4%)等の凶悪犯も見られる。

II-79表 罪名・非行名別更生保護会在会者の構成比(昭和54年2月15日現在)

 在会者の健康状態別就労状況を見ると,II-80表のとおり,労働が可能な程度の健康な者にあっては1,297人中1,157人(89.2%)が就労し,虚弱な者においをも69人中53人(76.8%)が就労しており,在会者の労働意欲は概して高いものと見られる。次に,就労者について就労形態別に賃金形態及び月収額を見ると,II-81表のとおりである。就労者1,328人中676人(50.9%)が常雇いであり,302人(22.7%)が日雇いであるが,常雇いであっても日給の者が483人で71.4%と多く,月給の者は183人で27.1%にすぎない。常雇いで月給を受ける者の月収額は,10万円未満が43人(23.5%),10万円以上15万円未満が88人(48.1%),15万円以上が52人(28.4%)で,71.6%の者が月収額15万円未満である。常雇いで,かつ,月給の者は全就労者中の13.8%と少なく,在会者の多くは,就労,賃金ともに不安定な状態にあるものと見られる。

II-80表 更生保護会在会者の健康状態別就労状況(昭和54年2月15日現在)

II-81表 更生保護会在会者の就労形態・賃金形態別人員(昭和54年2月15日現在)

 以上のように,在会者が置かれている状況は,多くは在会者自らが招いたことに由来しているとはいえ,犯罪の繰り返しにより,家族や近親者からうとんぜられて孤立し,肉親の支えを失っているばかりでなく,生活目標すら見失っているような不幸な者が多い。更生保護会は,これらの社会不適応者にとって最後のより所になっているとも言えるようである。