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 昭和54年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節/2 

2 仮出獄の運用

 少年院仮退院及び不定期刑受刑者の仮出獄については第3編第2章第5節に譲り,ここでは,仮出獄の運用について述べる。仮出獄は,法定の期間(有期刑では刑期の三分の一,無期刑では10年。ただし,少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者は,無期刑については7年,10年以上15年以下の有期の刑については3年)を経過した後において,悔悟の情と更生の意欲が認められること,再犯のおそれがないと認められること,社会の感情が本人の仮出獄を是認すると認められること等の事情を総合的に判断して,保護観察に付することが本人の改善更生に相当であると認められるときに,釈放の日,帰住地等を指定して許可される。II-52表は,最近5年間の仮出獄許否状況を全般的に示したものであり,近年棄却率の上昇が見られる。51年以降について,懲役・禁錮の別,有期刑・無期刑の別及び有期刑のうち定期刑・不定期刑の別に仮出獄申請の棄却率を見ると,II-53表のとおりである。懲役と禁錮とでは,後者の棄却率は各年とも1%程度で,ほぼ横ばいであるが,前者のそれは51年の11.0%から,52年の11.5%,53年の12.6%とやや上昇の傾向が認められる。有期刑と無期刑とでは,無期刑の棄却率が極めて高く,定期刑と不定期刑とでは,定期刑の棄却率が高いが,近年不定期刑受刑者に対する棄却率が次第に上昇し,定期刑受刑者のそれに近接する傾向が見られる。

II-52表 仮出獄,仮出場,少年院仮退院の許否状況(昭和49年〜53年)

II-53表 刑名等の区分による仮出獄許否状況(昭和51年〜53年)

 刑法上の累犯者と非累犯者の別及び刑務所入所度数の別に,最近3年間における棄却率を見ると,II-54表に示すとおりで,各年とも,累犯者に対する棄却率は非累犯者のそれよりも高く,入所度数の多い者ほど棄却される率が高い。昭和53年に許否決定のあった有期の懲役又は禁錮の者について,累犯,非累犯に分け,刑期の段階別に許否状況を見ると,II-55表のとおりで,累犯,非累犯のいずれにおいても刑期の長い者ほど棄却される割合が高い。

II-54表 累犯・非累犯別及び入所度数別仮出獄許否状況(昭和51年〜53年)

II-55表 有期刑受刑者の累犯・非累犯別,刑期別仮出獄許否状況(昭和53年)

II-56表 定期刑仮出獄者の累犯・非累犯別及び刑期別刑の執行率(昭和53年)

 昭和53年に仮出獄を許可された定期刑受刑者について,執行すべき刑期のうち,仮出獄までの執行済み刑期の割合(以下「執行率」という。)を刑期の段階別,累犯・非累犯別に見ると,II-56表のとおりである。非累犯者の場合,刑の執行率90%以上の者の割合は,刑期1年以下の者を除いて,いずれも20%台にすぎない。これに対し,累犯者の場合,執行率90%以上の者の割合は,刑期1年以下の者の60%弱が最も低く,2年以下で70.9%,3年以下で84.7%,5年以下で85.5%,5年超で67.7%と,それぞれ高い数値を示している。また,執行率69%以下で仮出獄を許される者は,累犯者の場合ほとんど数えるに足りないが,非累犯者の場合,全体の4.1%であり,これを刑期の段階別に見ると,刑期1年以下で1.4%,2年以下で4.1%と順次多くなり,5年を超える刑期では8.9%に達している。
 無期刑受刑者で仮出獄を許された者の在監期間を最近5年間について見ると,II-57表のとおりで,各年とも,在監期間が20年を超える者は少なく,14年を超え18年以内の者が多い。

II-57表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和49年〜53年)