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 昭和54年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節/1 

第3章 更生保護

第1節 仮釈放

1 概  況

 仮釈放とは,矯正施設に収容されている者を,収容期間満了以前に仮に釈放して社会復帰の機会を与える措置の総称であり,これには,懲役又は禁錮受刑者に対する仮出獄,拘留又は労役場留置中の者に対する仮出場,少年院送致の処分を受けて収容中の者に対する仮退院,補導処分付執行猶予で婦人補導院に収容されている者に対する仮退院の計4種類がある。仮釈放の権限は,地方更生保護委員会に属し,地方更生保護委員会は,仮出場の場合を除き職権で審理を行うこともできるが,通常は,矯正施設の長から申請がなされた者について審理を行い,許否の決定を行っている。昭和24年以降の地方更生保護委員会における仮釈放審理事件の受理人員の推移を種類別に見ると,II-51表及びII-3図のとおりである。長期的に見れば,矯正施設収容人口の減少に伴い,受理人員はいずれも減少しているが,最近について見ると,仮出獄審理事件は,ほぼ横ぼいであり,少年院仮退院審理事件は,昭和50年を境として,その後増加の方向に転じている。これは,最近,矯正施設収容人口の減少に終止符が打たれ,特に,少年院に送致される者が増加していることによるものと思われる。
 仮釈放審理事件に対する地方更生保護委員会の許否決定の状況を最近5年間について見ると,II-52表のとおりで,仮出獄申請の棄却率は毎年10%を超えているが,少年院からの仮退院申請の棄却率は極めて低く,1%にも達しない。少年院からの仮退院申請の棄却率がこのように低いのは,少年院在院者については,矯正施設内の処遇と仮退院後の保護観察処遇との一体的な運用が図られていることによるものであろう。

II-51表 仮釈放審理事件の受理人員(昭和24年〜53年)

II-3図 仮釈放審理事件受理人員の推移(昭和24年〜53年)

 仮釈放になった者は,仮出場の者を除いて,すべて仮釈放の期間中守るべき遵守事項が課せられ,保護観察に付される。この期間中に,遵守事項違反又は再犯等があれば,仮釈放を取り消されて矯正施設に再収容されることがある。保護観察の期間は,仮出獄者については残刑期間,少年院仮退院者については原則として20歳までであるが,期間を定めて収容された者の場合は満期に達するまでであり,婦人補導院仮退院者については補導処分の残期間である。これに対し,仮出場は,保護観察に付されることも,また,仮出場が取り消されて矯正施設に再収容されることもない。