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 昭和54年版 犯罪白書 第2編/第2章/第3節/3 

3 開放的処遇

 分類処遇の進展に伴って,新しい処遇方法が開発されてきている。その中の一つである開放的処遇は,受刑者の拘禁を確保するための物理的・有形的な設備及び措置を緩和し,受刑者の自律心と責任感に対する信頼を基礎とすることによって行う処遇制度である。
 我が国の開放的処遇は,交通事犯禁錮受刑者が急増した昭和30年代半ばから後半にかけて,その集禁と特別の処遇方法によって本格化した。当初は,豊橋刑務支所(36年開始),習志野刑務支所(38年開始,後に市原刑務所として独立。なお,51年11月以降は,交通事犯懲役受刑者をも集禁する。),加古川刑務所(38年開始,なお,53年4月以降は,交通事犯懲役受刑者をも集禁する。)などの施設で行われたが,現在では,これら3施設のほか,尾道刑務支所,大分刑務所,山形刑務所,函館少年刑務所及び西条刑務支所の5施設でも行われている。
 一般の懲役受刑者に対する開放的施設としては,昭和45年に喜連川刑務支所が開設され,農業及び土木の職業訓練を中心に開放的処遇が実施されている。
 これらの開放的施設では,居室,食堂,工場等には原則として施錠せず,行刑区域内では戒護者を付けず,面会に際してはなるべく立会者を付けない扱いとし,他方,生活訓練,職業訓練等社会復帰に必要な教育的処遇を積極的に展開している。また,開放的処遇には,B級受刑者を含めた受刑者一般を対象とする構外作業場における処遇がある。構外作業場は,累進処遇におけるいわゆる中期以降の半開放的処遇を行う場として,受刑者処遇上重要な役割を果たしており,受刑者の自立心を育成するとともに,外部の社会的資源を活用し,職業上の免許・資格の取得に資している。