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 昭和54年版 犯罪白書 第2編/第1章/第2節/3 

3 刑の執行猶予

 通常第一審において言い渡された有期の懲役・禁錮の執行猶予人員を昭和48年以降5年間について見ると,II-18表のとおりである。有期懲役・禁錮の言渡人員総数及び執行猶予人員は,49年に減少した後,50年以降増加を続けており,執行猶予率もほぼ同様の傾向を示しているが,52年には60.7%と前年よりやや減少している。保護観察に付される者の比率は,51年から下降を始めて52年には17.6%となり,その実数も前年より減少した。

II-18表 通常第一審有期懲役・禁錮言渡人員中の執行猶予人員(昭和48年〜52年)

 II-19表は,最近5年間における執行猶予確定人員を初度・再度別,猶予期間別に見たものである。再度,すなわち執行猶予中に更に執行猶予を言い渡された者の比率は,昭和53年においても前年と同じく3.9%であり,当然その全員が保護観察又は補導処分に付されているが,初度の者のうち保護観察に付された者の比率は,53年には前年より1.2%増加して14.7%となっている。執行猶予の期間を見ると,3年の者が最も多く,その比率は,49年の57.6%から53年の62.1%まで次第に上昇している。猶予期間2年の者の比率も52年まで上昇を続けており,一方,4年及び5年という長期の猶予期間の者の比率は減少傾向にあることを考えれば,猶予期間は短縮化に向かっていると言えよう。

II-19表 初度・再度別猶予期間別執行猶予確定人員(昭和49年〜53年)

II-20表 取消事由別執行猶予取消人員(昭和49年〜53年)

 最近5年間における再犯などによる執行猶予取消人員を取消事由別に見ると,II-20表のとおりである。取消人員総数は逐年増加し,昭和53年には49年より68%増の5,822人となっており,その95.6%は再犯によって禁錮以上の実刑に処せられたことによる取消しである。ある年次における執行猶予確定人員とその年次の執行猶予取消人員とは,本来その対象を異にするものであるので,前者に対する後者の比率は,本来の意味での執行猶予取消率ではないが,執行猶予取消率のおよその傾向を知るため,従来から前記比率を算出して執行猶予取消率と称してきた。このような意味での取消率は,49年の8.7%から次第に上昇して53年には12.4%に達している。再犯によって執行猶予を取り消された者について,保護観察付きの有無別にその比率を見ると,53年では,単純執行猶予では9.1%にとどまっているのに対し,保護観察付執行猶予では24.1%にも及んでいる。執行猶予の取消率は,平均3年間,長いものは5年間に及ぶ執行猶予者の再犯率に近い数字であることを考えれば,特に執行猶予期間の長い者の占める比率が高い保護観察付執行猶予の運用には困難さが感じられる。