4 保安拘禁,刑事後見及び刑の加重 西ドイツ,フランス,イギリス,ノルウェー,スウェーデン,デンマークなどの西欧諸国は,常習累犯者対策として,保安処分又はこれに代わる加重刑の制度を有している。 西ドイツの保安拘禁者数は逐年減少しているが,1977年にはなお271人を数え,フランスでは,流刑に代わって1970年に創設された刑事後見によって拘禁中の者は,逐年増加して1975年に252人に達している。イギリスにおいては,保安拘禁及び矯正訓練に代わって1967年に創設された刑の加重による言渡人員は,1970年に129人のピークに達したが,その後は減少を続け1977年にはわずか16人になった。スカンジナビア三国の保安拘禁者数も近年著しく減少している。 フランスを除き,いずれの国でも保安拘禁等の適用が減少している理由は,刑の服役後に保安拘禁に移行する場合は,矯正施設の諸条件に制約されて二重の刑と同視され易いこと,真に危険な犯罪者はわずかしか保安拘禁に付せられないのに対し,余り重要でない主として財産犯の累犯者にこの処分が科されることが多かったことなどから,裁判所がこの処分の適用に謙抑的になったという理由のほか,施設内処遇から社会内処遇へ,又は長期の拘禁を可及的に回避しようとする西欧の刑事政策思潮の影響によると言われている。 我が国は,保安拘禁等の保安処分制度を有していないが,危険な累犯者や窃盗,詐欺等のひん回累犯者など西欧の保安拘禁等の要件に該当する累犯者は少なくないのであって,これらの者を教化・改善し,また,その犯罪から社会を防衛するために有効な対策が確立される必要があるように思われる。
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