前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節/1 

第5節 交通犯罪

1 交通事故の現況

 最近5年間における交通事故の発生件数及び死傷者数は,I-42表のとおりである。昭和52年までは減少傾向にあったが,53年に発生した死傷者を伴う交通事故は,前年より0.7%増加して46万4,037件となり,負傷者も同じく0.2%増加して59万4,116人となった。ただし,53年の死亡者は前年より1.8%減少して8,783人となっている。人口及び自動車が増加しているため,人口10万人又は自動車1万台当たりの死傷者は,着実に減少している。死傷者が最も多かった45年(死亡者1万6,765人,負傷者98万1,096人)に比べると,53年の死亡者は48%,負傷者は39%の減少を示している。

I-42表 交通事故の発生件数・死傷者数(昭和49年〜53年)

 交通事故による死傷者,自動車保有台数,燃料消費量及び自動車1台当たり平均走行距離について,昭和44年を100とする指数によって最近10年間の推移を見ると,I-7図のとおりである。53年における自動車保有台数は,前年より6.5%増加して約3,500万台となったほか,石油ショック後の49年に一時下がった燃料消費量も,その後は依然として上昇を続け,50年,51年と横ばい状態にあった平均走行距離も,52年にはやや増加している。なお,53年末における自動車運転免許保有者数は,前年より58%増加して約3,917万人となった。
 この図で見る限り,交通事故死傷者の増減曲線と平均走行距離の増減曲線とが,極めて類似する傾向・推移を示していることが注目される。両者には密接な相関関係が存在するのであろうか。なお,昭和52年に平均走行距離がやや増加しているが,次いで53年には交通事故負傷者が微増している。
 最近3年間における人身事故を伴ういわゆるひき逃げ事件の発生件数及び検挙件数は,I-43表のとおりである。昭和43年には2万434件であった発生件数は,48年の3万978件まで増加し,49年,50年といったん減少したあと,51年以降再び増加に転じて,53年には3万2,223件となっている。死傷者数もこれにつれて増減し,53年の死亡者は前年より1.2%増加して406人,負傷者も同じく1.1%増加して3万6,518人となっており,交通事故全死傷者数中に占める比率は,43年の2.8%から逐年上昇して,53年には6.1%に達している。また,43年には85.9%であった検挙率は,53年には89.8%を示した。

I-7図 交通事故死傷者数と自動車保有台数等の推移(昭和44年〜53年)(昭和44年= 100)

I-43表 ひき逃げ事件発生・検挙件数(昭和51年〜53年)

 交通事故を発生させた自動車を車種別に見ると,I-44表のとおりである。普通乗用自動車の比率は,逐年上昇を続け,昭和53年には53.0%となっており,その90%以上は自家用車であるが,1万台当たりの事故発生件数では,事業用普通乗用自動車が693.0件と各車種中で最も多く,自家用普通乗用自動車の約6倍となっている。大型乗用自動車による事故の比率は漸減して,53年では1.3%にすぎないが,そのうち事業用大型乗用自動車(バス)は,1万台当たり463,1件と第2位の事故発生件数を示しており,事業用車の大きな走行距離が事故発生件数に反映しているように思われる。
 昭和53年の事故類型を見ると,従来の傾向どおり,車両相互間の事故が増えて72.9%となり,人対車両の事故と車両単独の事故は減少している。同じく事故態様を見ると,車両同士の出会い頭の衝突事故が前年より約6,000件増加し,事故現場別では,信号機のない安差点内での事故が約4,000件増加していることが注目される。

I-44表 車種別交通事故発生件数の構成比(昭和49年〜53年)

 昭和53年の死傷者を都道府県別に見ると,死亡者の実数では,北海道(494人),大阪(416人)及び埼玉(407人)が多く,人口比(人口10万人当たりの死亡者数)では,14.8の香川が最も多く,滋賀及び茨城がこれに次いでいる。負傷者の実数では,大阪(4万2,461人)を筆頭に,東京,福岡の順となり,人口比では,京都(850.6)を筆頭に,徳島,静岡の順となる。一方,死亡者の人口比が少ない都府県は,東京(2.5),大阪,神奈川などであり,負傷者の人口比では,沖縄(181.2)のほか,秋田,東京などが少ない。前年に比べて最も数の増加した府県は,死亡者では大阪(55人増)であり,負傷者では宮城(1,723人増)である。