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 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/5 

5 日本赤軍の動向

 昭和47年以降における日本赤軍による国際テロ事件は,次のとおりである。
 [1] 47年5月31日のテルアビブ空港乱射事件
 [2] 48年7月20日の日航ジャンボ機乗取り事件
 [3] 49年1月31日2月6日のシンガポール・クウェート事件
 [4] 49年7月26日のパリ偽造旅券事件
 [5] 49年9月14日のハーグ・フランス大使館占拠事件
 [6] 50年8月4日のクアラルンプール米領事館,スウェーデン大使館占拠事件
 [7] 52年9月28日のダッカ日航機乗取り事件
 昭和53年においては,日本赤軍は国際テロ事件を起こしていないが,国内支援グループに対する広報活動を強化し,在監中の刑事被告人等に対してレバノンから連帯を呼びかける絵葉書を郵送するなど,注目すべき動向が見られる。

I-26表 地域別国際テロ事件発生件数(1968年〜1978年)

 政府は,ダッカ事件を契機として,昭和52年10月,内閣に「ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部」を設置し,日本赤軍対策,国際協力の推進,安全検査等7項目の防止対策を決定し,その一環として,「航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律」が同年11月19日に成立したが,これに引き続き,53年5月16日,「人質による強要行為等の処罰に関する法律」が成立した。更に,同年8月7日ボンで開催された7箇国首脳会議において,我が国の提案により,「航空機ハイジャックに関する声明」が採択され,7箇国政府は,航空機をハイジャックした者の身柄引渡し,又はその訴追を拒否する国,又はこのような航空機を返還しない国については,それらの国へのすべての航空機の運航を停止すること等に合意した。この声明を受けて,同年8月25日,前記対策本部は,「ハイジャック等に対する対処方針」を決定し,法秩序の維持のため,犯人の不法な要求に対して断乎たる態度をもって臨む決意を表明した。同年11月には,日本赤軍の在外公館襲撃に備えるための海外警備官制度も発足した。このように,日本赤軍の国際テロ活動に対しては,各般にわたる対策が講じられつつある。

I-6図 国際テロ事件の地域別発生件数(1968年〜1978年)

 世界における国際テロ事件の発生状況を見ると,I-26表及びI-6図のとおり,1978年(昭和53年)には353件発生しており,前年の279件より74件(約27%)増加している。地域別では,西欧が多くアジアは16件である。国際テロ事件を類型別に見ると,I-27表のとおり,1978年におけるハイジャックは2件にとどまり,前年の8件より減少しているが,誘拐は前年の22件から27件に増加し,占拠・人質略取も5件から11件に増加している。国際テロ活動の動向には今後も厳しい警戒が必要であり,特に国際テロ対策のかなめである情報収集活動の一層の充実・強化が望まれる。

I-27表 類型別国際テロ事件発生件数(1968年〜1978年)