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 昭和53年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/1 

第2節 少年非行の特質

1 少年非行の普遍化

 少年犯罪の要因として,いわゆる欠損家庭や家庭の貧困の問題が指摘されてから既に久しい。
 IV-11表は,家庭裁判所が取り扱った道交違反を除く一般保護少年について,その保護者の状況を,また,IV-12表は,その家庭の経済的生活程度を,それぞれ,昭和30年以降の推移において見たものである。
 近年,保護者として実父母のそろっている者の割合が増大し,いわゆる欠損家庭に属する者の犯罪少年中に占める比率は著しく減少し,また,経済生活の程度においても,普通域以上にある者の比率が上昇しており,いわゆる欠損家庭ないし貧困家庭という観点から少年非行を理解する考え方には,少なからず困難を生じている。
 親の欠損,あるいは家庭の貧困という少年非行の要因は,依然として認められるものの,最近では,その要因性は著しく希薄になっていると言えるであろう。

IV-11表 一般保護少年の保護者の状況(昭和30年,35年,40年,45年,50年,51年)

 このような犯罪少年をめぐる家庭の外的条件の好転に伴い,最近では,少年の非行要因として,不適切な家族関係や家族機能など家庭の内的な病理現象を重視する傾向が強まっている。
 IV-13表は,昭和49年以降検察庁において取り扱った犯罪少年について,保護者の監護状況を見たものである。52年においても,保護者の監護に何らかの問題があった家庭は総数の約9割に達しているが,その問題別に見て最も多いのは放任であり,溺愛・過保護,厳格・過干渉などがこれに続いている。
 このような傾向から見て,最近の非行少年は,両親もそろい,貧困でもない一般家庭の少年であることが多く,この意味で少年非行の言わば普遍化現象が見られるが,同時に,一般家庭のうち,家族機能に障害のある家庭の少年であることが少なくなく,むしろ,このほうが少年非行に密接に関連するに至っていると言うことができよう。

IV-12表 一般保護少年の保護者の経済的生活程度(昭和30年,35年,40年,45年,50年,51年)