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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第3章/第3節 

第3節 更生緊急保護と累犯

 更生緊急保護を受けた者の実態や成行きを明らかにするため,法務総合研究所では,昭和50年1月から同年3月までに更生緊急保護を受けた者のうち,満期釈放者175人,起訴猶予者103人について調査を行った。
 まず,III-51表は,その調査対象者の刑務所入所度数を見たものである。満期釈放者では,72.0%の者が入所度数3度以上の者であって,同5度以上の者でも50.3%となっている。また,起訴猶予者でも入所経験者が51.5%あり,3度以上入所の者が29.1%となっている。
 III-52表は,同じくこの調査対象者について本件前の身柄の拘束の有無を見たものである。満期釈放者で96.6%の者が,また,起訴猶予者で76.7%の者が身柄の拘束歴を有している。この事実から,更生緊急保護を受ける者の多くは犯罪を重ねてきた者であると言える。

III-51表 更生緊急保護対象者の入所度数

III-52表 更生緊急保護対象者の本件前の身柄拘束の有無

 更生緊急保護の措置のうち,更生保護会に収容する措置は,保護観察所による環境調整にもかかわらず帰住予定先での受入れが困難である一部の満期釈放者にとって,社会復帰を円滑にするために,欠くことのできないものとなっている。試みに,先に掲げたII-96表により,昭和52年に刑務所を出所した者の帰住予定先を見ると,入所度数2度以下の者では,父母の下に帰住する者が最も多く34.9%で,次いで配偶者の下が27.0%であるが,入所度数5度以上の者になると,父母の下への帰住が10.0%に減少し,配偶者の下への帰住も18.0%に減少する反面,更生保護会への帰住が著しく増加し,39.7%となっている。
 次に,III-53表は,前記調査対象者278人の成行きについて,保護申出時から2年間の再逮捕状況を調査したもので,175人(62.9%)の者が再逮捕されている。これを刑務所入所度数別で見ると,入所したことがない者の再逮捕率は低く,38.0%であるが,入所度数1・2度の者では63.9%, 3・4度の者では66.0%,5度以上の者では72.5%の再逮捕率となっており,入所度数が多くなるほど再逮捕率も高くなっている。なお,満期釈放者,起訴猶予者別では,その再逮捕率は,前者が72.6%,後者が46.6%であって,起訴猶予者の再逮捕率が低いが,これを刑務所入所度数3度以上の者に限って見ると,満期釈放者が71.4%,起訴猶予者が66.7%で,両者に大きな差異は見られない。

III-53表 保護申出後2年間の入所度数別再逮捕状況

 この再逮捕状況を再逮捕までの期間で見てみると,III-54表のとおりである。入所度数1・2度の者では3箇月以内で19.4%の者が再逮捕され,1年以内で44.4%となっているが,5度以上の者では再逮捕までの期間が短くなり,16.5%の者が1箇月以内に,34.9%の者が3箇月以内に,66.1%の者が1年以内に再逮捕されている。

III-54表 更生緊急保護対象者の入所度数別再逮捕までの期間(累積率)

 III-55表は,先の調査対象者の保護申出時の所持金を見たものである。調査対象者の多くは,保護申出時の所持金が1,000円未満であった。
 以上,この調査結果からは,更生緊急保護を要する者の多くは,当面の衣食に事欠くだけでなく,犯罪の繰返しから親族にも見放されており,その再犯率は高く,また,再犯期間も短いなど深刻な問題が多いことがわかるのであって,これらの者の再犯を防ぎ,その更生を図ることは容易なことではないと言えよう。

III-55表 保護申出時所持金の状況