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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/2 

2 累犯受刑者の人格特性

 累犯者の資質面の特質をは握することは,再犯防止上,極めて重要である。III-4図は,累犯受刑者の人格特性を見るため,累犯受刑者の大多数を占めるB級受刑者(犯罪傾向の進んでいる者)の知能指数を取り上げ,A級受刑者(犯罪傾向の進んでいない者,多くは初入者)と対比して示したものである。
 知能が普通域(知能指数90〜109)以上にある者は,B級30.1%,A級29.6%となっており,両群間に大きな差異は認められない。その他の知能段階については,A級とB級との対比において,準普通域(知能指数80〜89)ではA級中に占める比率が,また,限界域(同70〜79)以下ではB級中に占める比率が,それぞれ若干高くなっているが,その差は小さく,両群間に際立った差異は認められない。B級受刑者は,A級受刑者とほぼ同等の知的活動能力を保持していると言えよう。

III-4図 収容分類級別知能指数の構成比

III-5図 収容分類級別精神状況の構成比

III-6図 収容分類級別性格プロフィール

 III-5図は,昭和51年の新受刑者について,B級受刑者及びA級受刑者収容施設において各施設別に行った精神状況の判定結果を示したものである。B級・A級両群共に精神障害のない者が大多数を占め,何らかの精神障害のある者の占める比率は極めて低率である。精神障害の中で主要なものは,B級における精神薄弱,精神病質及びA級における精神薄弱等であるが,両群間の構成比に大きな差異はなく,両群はほぼ共通した精神状況にあると言える。
 次に,人格特性をは握するための他の指標として,性格を取り上げ,検討することとする。III-6図は,昭和50年1月に法務総合研究所が行った調査により,法務省式人格目録(法務省で開発した一種の性格検査)に基づくB級受刑者(対照群として,YB級及びYA級受刑者を選択している。)の性格を見たものである。
 性格の各領域を示す13尺度(虚構,偏向,自我防衛の信頼尺度を含む。)について,級別間の比較をすると,B級とYA級との間では虚構,偏向,自己顕示,軽繰及び偏狭の5尺度に,また,B級とYB級との間では虚構,偏向,自我防衛,抑うつ,不安定及び爆発の6尺度に,それぞれ差異が認められる。更に,YB級を含むB級全体について見ると,自己顕示,過活動及び偏狭の各尺度において,YA級との間に差異を示している。すなわち,具体的な性格特徴として,YB級を含むB級受刑者は,YA級受刑者に比べて自己中心的で軽率,加えて不平不満や支配欲求を強めやすい傾向にあることがうかがわれる。