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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/1 

1 犯罪の態様

 III-20表は,昭和30年,40年及び50年以降最近3年間における新受刑者中の再入者について,罪名別に各年の人員数及びその構成比を見たものである。なお,対比の便宜のため初入者のそれを掲げている。30年で見ると,再入者中数が最も多いのは,窃盗の1万9,714人(62.7%)であり,次いで詐欺の3,562人(11.3%),傷害・暴行の1,845人(5.9%),覚せい剤取締法違反の1,313人(4.2%),恐喝の1,053人(3.3%)などとなっている。40年では,窃盗が9,852人(50.8%),詐欺1,978人(10.2%),傷害・暴行1,606人(8.3%),恐喝1,361人(7.0%)となっている。50年以降の3箇年平均で見ると,窃盗6,504人(41.4%),傷害・暴行1,557人(9.9%),覚せい剤取締法違反1,463人(9.3%),詐欺1,352人(8.6%)となっている。最近3年間の傾向として,再入者中に占める罪名で,その数が最も多いのは,窃盗であるが,30年及び40年と比較して,その比率は,次第に低下してきている。次いで,傷害・暴行が多くなっており,詐欺がこれに続いている。また,30年及び40年を通じて,その数及び比率共に目立っていた恐喝は,少なくなっていることがわかる。これに対して,覚せい剤取締法違反は著しく増加してきている。

III-20表 新受刑者中再入者と初入者の罪名別比較(昭和30年,40年,50年〜52年)

III-21表 新受刑者中の再入受刑者罪名別人員と再入者率(昭和48年〜52年の累計)

 III-21表は,昭和48年から52年までの新受刑者について,再入受刑者の占める比率を,罪名別に焦点を当てて見たものである。比率が最も高い罪名は,住居侵入の83.9%であり,次いで,脅迫の75.6%,暴力行為等処罰法違反の75.0%,窃盗の71.5%,売春防止法違反の69.5%などとなっている。

III-22表 刑法犯再入受刑者中再入刑罪名と前刑罪名とが同一である者の比率(昭和43年〜52年)

 III-22表は,昭和43年から47年まで及び48年から52年までの各5年間における刑法犯の再入受刑者について,前後同一罪名のもの(再入刑とその前刑の罪名が同一のもの)の占める比率で,犯罪の反復傾向を見たものである(52年については,特にその実数及び比率を掲げている。)。全体として,その比率(同一罪名の反復率)が高いのは,窃盗及び詐欺であり,次いで,暴力行為等処罰法違反,傷害・暴行となっている。また,43年から47年までと48年から52年までの両期間において,同一犯罪の反復傾向の変化を見ると,48年から52年までのほうの比率が高くなっているのは,強盗,詐欺,恐喝,強姦,傷害・暴行,業務上(重)過失致死傷,脅迫,殺人,放火及び住居侵入である。
 III-23表は,昭和53年1月に法務総合研究所で行った調査により,51年の新受刑者中のB級系統受刑者について,入所度数と年齢の関係を見たものである。年齢層別構成比の最も高いのは,それぞれ,初度の者についての20歳代,2度から4度までの者についての25歳から34歳まで,5度の者についての30歳代,6度以上の者についての40歳代であり,入所度数とともに年齢層が高くなっている。

III-23表 B級系統受刑者の入所度数別年齢

 III-24表及びIII-25表は,それぞれ,犯行の動機及び犯行の態様について,入所度数別に見たものである。犯行動機では,全体として,利欲,困窮・生活苦,遊びが主要なものであるが,入所度数が増加するにつれて,利欲,困窮・生活苦の占める比率が高まり,遊びは,3度までは比率が高まっているが,4度以上になるとむしろ低くなっているのが注目される。犯行態様としては,習慣的及び計画的なものが多い。なお,習慣的なものは入所度数が増すにつれて比率が高まっているが,計画的なものについて入所度数との関連は特に見られない。

III-24表 B級系統受刑者の入所度数別犯行動機

III-25表 B級系統受刑者の入所度数別犯行態様