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矯正処遇は,受刑者の改善更生・社会復帰を目的として行われるが,出所後再び犯罪を犯し,刑務所に入所する再入者(裁判の確定により,2度以上入所した懲役・禁錮・拘留の自由刑受刑者をいう。以下同じ。)の数は,必ずしも少なくない。その多くは,刑法第56条又は第59条に定める要件に合致する刑法上の累犯である。
III-18表は,現行刑法及び監獄法が施行された明治41年から昭和52年までの各年における新たに入所した懲役受刑者について,刑法上の累犯者の占める比率を示すものである。20%台の低い比率が見られるのは,明治43・44年,昭和19年から23年までの二つの期間であり,反対に,50%を超える高い比率が見られるのは,明治41年及び昭和13年から15年までの期間と昭和48・49年を除く昭和27年以降の全期間である。 全体を通じての上記新受刑者中に占める刑法上の累犯者の比率は,44.1%となっている。また,昭和19年以前の37年間のそれは,39.9%であり,20年,以降の33年間では,48.2%と高くなっている。特に,27年以降40年までは各年共55%を超え,41年以降は,多少の起伏を示しながらも,ほぼ50%前後で推移している。 III-19表は,昭和10年,20年,30年,40年,45年及び50年以降最近3年間における新受刑者の入所度数別の構成比を示すものである。最近3年間の平均では,初人者42.1%,再入者57.9%である。この割合は,終戦による混乱期の20年の場合以外は,上記各年次において大差がない。また,入所度数6度以上の再入者が,その構成比において起伏があるのに,その実数において同様20年の部分を除いて,それほどの差異がなく,ほぼ一定数のひん回再入者の存在が推測される。 III-18表 新受刑者中の累犯者及び累犯者率(明治41年〜昭和52年) III-19表 新受刑者の入所度数別人員(昭和10年,20年,30年,40年,45年,50年〜52年) 第2編第2章第2節で触れたように,受刑者分類規程では,収容分類級にA級(犯罪傾向の進んでいない者)及びB級(犯罪傾向の進んでいる者)の区別を設けているが,このA級・B級の判定の指標として,刑務所等施設への収容歴(入所歴の有無,それがある場合の回数),反社会性集団への所属性(構成員との接触があったか否か,構成員であったか,構成員としての地位,加入期間),犯行の態様(偶発的・機会的か,又は習慣的・計画的か),習癖と生活態度(薬物依存・アルコール中毒・かけ事耽溺の有無,正業に就き安定した収入の有無等),その他,犯歴・再犯期間等があり,これらを総合して判定が行われている。再入者は,これらの徴表に照らして,B級(犯罪傾向が進んでいる者)と判定されることが多い。III-3図は,現行受刑者分類規程が施行(昭和47年7月)された翌年の48年中の出所者2万8,196人について,その52年末までの再入状況を,出所時の収容分類級別に累積再入率で見たものである。51年末に比べて,全体で4.4%増加し,約5年間で40.7%の累積再入率を示している。収容分類級別では,B級55.6%,YB級51.4%,YA級27.8%,A級22.3%及びIA級3.4%の累積再入率となっている。 概して言えば,再入する者の率は,全体として見て,出所後約5年で,およそ4割というところである。犯罪傾向の進んでいないA級系統受刑者については,3割にも満たない状況であるが,他方,犯罪傾向の進んでいるB級系統受刑者については,5割を超えており,この種受刑者における犯罪反復傾向がうかがわれる。 III-3図 昭和48年出所受刑者の出所時収容分類級別累積再入率(昭和48年〜52年) |