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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/3 

3 累犯の一般的特性

 以上,統計に基づいて裁判の領域から累犯現象の実態を概観したが,次に,大量の犯歴データを資料として,累犯の一般的特性を見ることとする。
 法務省では,昭和47年からコンピュータの導入により,犯歴事務が電算化され,大量の犯歴データが逐次集中管理されるに至っている。前科(有罪の確定裁判)の内容や刑の執行状況に関するデータ(これを通常「犯歴」と呼んでいる。)は,検察・裁判運営上の資料として用いられているが,法務総合研究所においては,法務大臣官房秘書課電子計算機室の協力を得て,これらの犯歴データの中から東京,大阪,神奈川,愛知,兵庫,福岡の6都府県に本籍を有する前科者(ただし業過,条例違反の前科及び道交違反による罰金前科の犯歴を除く。)のうち任意の38万人(犯歴総数67万3,288犯,1人平均犯歴数1.8犯)を標本として選び,これらの対象者による23年1月1日以降52年6月1日までの約30年間にわたる累犯現象について分析を試みた。
 なお,分析の便宜上,併科刑(懲役と罰金が併科された場合など)又は複数刑(二つ以上の懲役が科された場合など)の同時言渡しの場合については,そのうちの最も重い一つの刑を,併合罪・科刑上一罪については,おおむね法定刑の最も重い罪名一つを選択し,一刑一罪名となるように修正して処理した。また,犯歴データの性質上,対象者の起訴猶予歴及び保護処分歴は分析の対象から除外されている。
 まず,38万人全対象者の個人別犯歴数を見ると,犯歴が1犯にとどまるものが25万8,249人で全体の68.0%を占め,最高は39犯の1人である。30犯以上の犯歴を有する者は10人,10犯以上で3,039人,5犯以上で2万3,695人(全体の6.2%)である。人員では全体の6.2%に過ぎない5犯以上の者の有する犯歴数合計は,16万5,563犯で,犯歴総数67万3,288人の24.6%を占めている。

III-10表 罪名別犯歴数及び人員

 III-10表は,全調査対象者について,主要罪名別に犯歴数の総数と当該罪名の犯罪を犯した対象者の実人員総数,犯歴数別構成比等を示したものである。最後に犯歴総数を総人員で除した数値を示してあるが,これにより,当該犯罪が同一人によって繰り返される比率,すなわち,その犯罪が性質上有する累犯性を統計的に比較することができよう。
 全体として見ると,同一人によって繰り返される比率は,売春防止法違反で最も高く,1人当たり平均2犯以上あることが明らかであり,次いで,窃盗,毒物及び劇物取締法違反,麻薬取締法違反,傷害,わいせつ,覚せい剤取締法違反,賭博,詐欺などの順となっている。また,10犯以上のひん回累犯者の多いのは,売春防止法違反,毒物及び劇物取締法違反,窃盗,詐欺,賍物関係などである。
 次に,累犯者を,単一型(同一罪名の犯罪のみを繰り返している者),同種型(同種の犯罪を繰り返している者),異種型(2種の犯罪を繰り返している者),多種型(3種以上の犯罪を繰り返している者)に類型化して,犯罪者がどのような種類の犯罪を繰り返す傾向があるかを検討することとする。
 III-11表は,調査対象者のうち,昭和47年1月1日から52年6月1日までの最近の約5年間に有罪判決の確定した者9万9,820人について,上述の類型別犯歴数別構成比を見たものである。犯歴を2以上有する者は4万444人で,総数の40.5%であるが,その内訳は,単一型が24.6%,同種型が8.4%,異種型が44.1%,多種型が23.0%となっている。類型別に犯歴数を見ると,単一型に犯歴数20回以上のひん回累犯者が比較的多い点を除けば,単一型,同種型,異種型の間に著しい差異は認められない。この三類型と多種型とを比べると,多種型で犯歴数5回以上の者の占める割合が多く,多種類の犯罪を犯す累犯者には,累犯性の強いものが多いことがわかる。

III-11表 累犯者の類型別の犯歴数別構成比

III-12表 罪名別に見た累犯者の類型

 次に,犯歴を2以上有するこの4万444人について,主要罪名別に累犯者の類型を見ると,III-12表のとおりである。まず,罪名別に単一型の占める比率を見ると,売春防止法違反が最も高く,以下,毒物及び劇物取締法違反,窃盗,わいせつ,大麻取締法違反,賭博,傷害の順となっている。次に,同種型の占める比率は,暴行,脅迫,傷害,兇器準備集合などの粗暴犯や横領,詐欺,賍物関係などの財産犯で比較的高い。異種型の占める比率は,一般にどの罪名でも高いと言えるが,罪名別に見ると,背任で最も高く,以下,放火,競馬法違反,強盗,強盗致死傷,強姦の順となっている。また,多種型の占める比率は,覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反などの薬物関係犯罪,殺人,強盗強姦・同致死,強盗致死傷,強盗などの凶悪犯,強姦,強制わいせつなどの性犯罪,その他暴力行為等処罰に関する法律違反,放火などで高率となっている。

III-13表 異種型累犯者の罪種別構成比

 次に,異種型の累犯者について,財産犯,凶悪犯,粗暴犯,性犯罪,薬物関係犯罪,風俗犯の各罪種相互の親和性の強弱を見るため,昭和47年1月1日から52年6月1日までの約5年間に有罪裁判の確定した調査対象者のうちから,これらの6罪種による異種型の累犯者475人を無差別に抽出し,その各罪種の組合せ別に人員と構成比を示したのが,III-13表である。これらの6罪種の組合せの中では,財産犯と粗暴犯との組合せが最も多く,4割強を占めている。