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 昭和53年版 犯罪白書 第2編/第2章/第4節 

第4節 婦人補導院

 婦人補導院は,売春防止法第5条の罪を犯して補導処分に付された成人の女子を収容し,これに更生のために必要な補導を行う施設である。収容期間は6箇月で,その間,規律ある明るい環境のもとで,社会生活に適応させるために必要な生活指導と職業補導とを行い,併せて更生の妨げとなる心身の障害を除去するための医療を施している。

II-66表 婦人補導院の人出院状況(昭和35年,40年,45年,50年〜52年)

 II-66表は,昭和35年以降5年おきに見た婦人補導院の人出院状況であるが,52年について見ると,新収容者数は,わずかに18人のみである。
 これら昭和52年の新収容者の特性としては,精神状況について精神薄弱者が7人,精神病者が3人となっており,何らかの特別処遇を必要とする精神障害者の割合が過半数を占めている。また,知能指数の低い者が多い。更に,すべての者が何らかの傷病を持っている。年齢については,若年者が幾分増加してきているが,40歳以上が8人で4割余となっている。また,売春経験の年数は,かなり長く,10年を超える者が10人で半数強である。
 このように婦人補導院の収容者は,概して高齢で,心身に障害があり,かつ,累犯性の高い者が多いことにかんがみ,婦人補導院では,昭和51年から新しい処遇体系に基づいて,収容者の特性に応じ,徹底した個別処遇を実施している。その処遇の内容は,従来の職業指導,生活指導,医療,環境調整等のほかに,売春そのものを問題として取り上げ,フィルム学習や集団討議,個別面接等を行っている。婦人補導院における調査結果によると,在院者の大多数は,売春防止法第5条違反者が検挙や補導の対象とされるのは不合理であるとしながらも,売春には否定的態度を示していることが明らかにされている。これを徳性かん養の契機として,生活指導は,秩序ある生活の管理,集団作り等に重点が置かれている。職業補導も,知識や技能の付与のほか,職業への健全な態度,意欲等を重視して実施されている。医療は,更生の妨げとなる心身の障害に対して行われており,特に,性病の治療に重点が置かれているが,収容期間の関係で,未治ゆのまま出院する者もある。更に,婦人補導院在院者には帰住先の環境に恵まれない者が多く,退院後における社会復帰のための諸施策を関係機関の協力によって進めていく必要があろう。