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 昭和53年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/5 

5 教育活動

 受刑者に対する教育活動としては,入所時教育,出所時教育,教科教育,通信教育,生活指導,体育,レクリェーション指導及び篤志面接委員による助言・指導などが行われている。
 入所時教育は,新たに入所した受刑者に対し,その精神的安定を図るとともに,受刑の心構え,施設の機構,所内規則,処遇の概要,保護関係の調整,釈放後の生活設計等の教示及び指導に重点が置かれている。
 出所時教育としては,社会情勢,出所に関する諸手続,更生保護,職業安定,社会福祉等の制度や利用手続などの解説及び教示,釈放後の生活設計に関する助言・指導などが行われている。
 生活指導は,受刑者の自覚を促し,規則正しい生活及び勤労の精神を養い,共同生活を円滑に営み得るような態度,習慣,知識などをかん養することをねらいとするもので,各分類級ごとに重点処遇項目には変化が付けられている。その内容は,自治的活動及び体育訓練をはじめ,読書指導,道徳教育,集団訓練,趣味活動,教養講座,礼儀作法等に及び,これらの中から1又は2以上の種目が処遇分類級に応じて重点事項に指定されている。なお,全受刑者を対象とし,又はグループ活動として,一般講演,社会見学,クラブ活動,集会,委員会活動(給食,図書,放送等の各委員会活動)などが行われ,また,個別又は集団カウンセリングが実施されている。
 教科教育は,それを必要とする受刑者に対して実施されている。教科内容について見ると,義務教育未修了者又は修了者中の学力の低い者に対して,国語,数学,社会の基礎的教科が補習教育として行われている(少年受刑者については,第4編第2章第4節参照)。更に,向学心のある者に対する高等学校通信課程の受講制度も設けられている。なお,職業指導の一環として珠算,簿記等の資格を取得できる科目の指導も行われている。昭和52年中の教科教育履修人員は5,167人で,その学歴別内訳は,義務教育終了者3,270人,同未修了者567人,高等学校中退者637人,同卒業者379人となっている。
 通信教育は,主として学校通信教育と社会通信教育により,受刑者に教養向上の機会を与え,また,教科教育の一環としても行われている。受講者には,受講に要する費用の全額を国が負担する公費生と,受講者自らが負担する私費生とがある。昭和52年度中の受講生は,公費生・私費生合わせて3,992人となっている。
 篤志面接委員制度は,個々の受刑者が持つ精神的な悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などの問題を解決するため,民間の学識経験者の助言・指導を受けるもので,かなりの成果を収めている。昭和52年末現在の篤志面接委員の総数は,II-48表のとおり,1,052人で,その面接回数はII-49表のとおり,合計1万206回となっている。なお,委員1人当たりの来訪回数は8.0回,面接回数は9.7回となっている。
 II-50表は,受刑者の宗教に対する関心度を示すものである。全体の半数以上に当たる54.4%の者が宗教に関心を持ち,宗教に無関心とする者は34.5%である。無関心の傾向は30歳以下の年齢層に多く見られる。特定の宗教を信仰している者は,全体の28.8%で年齢の高い層ほどその割合が大きくなっている。

II-48表 篤志面接委員数

II-49表 篤志面接相談内容別実施状況

II-50表 受刑者の宗教に対する年齢層別関心度

 信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者には,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)による宗教教誨を受ける機会が与えられている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養い,進んで反省の契機を得ることに役立たせようとするもので,死刑確定者,無期その他長期の受刑者に対する宗教教誨は,特にその心情の安定に資している。昭和52年末現在における教誨師の総数は1,377人で,各宗各派にわたっている。52年中における宗教教誨実施状況は,II-51表のとおりである。

II-51表 宗教教誨実施状況