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 昭和53年版 犯罪白書 第1編/第2章/第4節/1 

第4節 公務員犯罪

1 公務員犯罪の受理と処理

 公務員による犯罪には,公務員の職務に関して行われるものと,その職務に関係なく行われるものとがあるが,ここでは,その両者を含めて,公務員によって行われたすべての犯罪について述べる。I-42表は,昭和48年以降,検察庁で新たに受理された公務員(公団や公社の職員のようないわゆる「みなす公務員」を除く。)による犯罪を主要罪名別に見たものである。最近5年間の推移を見ると,公務員犯罪全体の受理人員には大きな変化はないが,罪名別では,職権濫用,横領の増加が著しい。職権濫用の大部分は,警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴・告発事件であり,嫌疑の不十分のものが多い。次に,52年について,罪名別に受理人員の全体に占める割合を見ると,最も多いのは業務上(重)過失致死傷の71.3%で,その他の刑法犯では,職権濫用が8.4%,収賄が3.0%などとなっており,特別法犯は5.4%を占めている。
 I-43表は,最近3年間の検察庁における公務員犯罪の処理状況を示したものである。昭和52年について,罪名別に起訴人員を見ると,業務上(重)過失致死傷が8,307人で最も多く,収賄の369人がこれに次いでいる。起訴率を見ると,刑法犯では収賄が66.8%で最も高く,業務上(重)過失致死傷の61.8%がこれに次いでおり,特別法犯全体では53.2%となっている。職権濫用の起訴率が例年極めて低いのは,この種事件の大部分が前述のような告訴・告発事件であって,事実自体が犯罪とならないもの,犯罪の嫌疑がないか,あるいは不十分なもの,告訴・告発時に既に公訴時効が完成しているものなどが多いためである。

I-42表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和48年〜52年)