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4 最近の注目される特異動向 昭和45年以降における日本赤軍関係のハイジャック・在外公館等襲撃事件の発生状況を見ると,I-38表のとおりである。
昭和52年9月28日,パリ発東京行き航路を就航中の日航機を,日本赤軍と称する犯人らがハイジャックし,バングラデシュ人民共和国ダッカ空港に着陸させたうえ,同機内にいる乗員,乗客らを人質として,我が国において勾留中の刑事被告人等9人の釈放等を要求するという事件が発生した。これに対し,政府は人質の人命を尊重するため真にやむを得ない措置として,犯人らの要求により上記刑事被告人らのうち出国を希望した6人(うち,過激派4人,一般刑事犯2人)を釈放するに至った。50年の在マレイシア・米国大使館占拠事件(クアラルンプール事件)に引き続き,二度までも犯人の不法な要求に応じ,重大犯罪を犯して拘禁中の者を釈放せざるを得なかったことは,多数の人質の生命の安全のためやむを得ない措置であったとは言え,法の威信と秩序に対する重大な打撃であった。 I-38表 日本赤軍関係ハイジャック・在外公館等襲撃事件(昭和45年〜52年) このような事態に対応し,政府は,昭和52年10月,内閣に「ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部」を設置し,各面にわたる総合的な防止対策を検討してきたが,その一環として,同年の第82回臨時国会において,「航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律」の可決・成立を見るに至った。同法は,航空機の強取等の処罰に関する法律を一部改正して航空機の強取等をした者が乗客等を人質にして第三者に対し義務のない行為をすること等を要求する罪を新設し,また,航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律を一部改正して爆発物,銃砲,刀剣類等を業務中の航空機内に持ち込む罪を新設し,更に,旅券法の一部改正により旅券の発給制限事由の範囲を拡大することなどをその内容とするものである。このほか,この種事犯を防止するため,国外の過激派の動向に関する情報収集及び取締りの強化,ハイジャック防止関連条約の未加盟国に対する働きかけ等の国際協力の推進,空港における安全検査の徹底など諸般の対策が講じられている。今後も引き続き総合的かつ強力な予防対策が検討され,実施されるべきであろう。ただ,このような卑劣な暴力的手段に訴えて無法な要求を貫こうとする者に対しては,断固として対決すべきであるとする国民的合意の上に立脚し,これに屈服しないことこそが法治国家の根幹をなす法秩序を維持し,ひいては,この種事犯の再発を防ぐ基盤となるものと考えられる。 次に,国内で最近注目される過激派の動向の一つとして,新東京国際空港反対闘争が再び激化していることが挙げられる。昭和52年中に発生した主要な事件を見ると,同年5月,反対派の構築した妨害鉄塔を公団側が除去したことに対し,過激派らは数次にわたり警備の警察官らを火炎びんにより襲撃し,延べ149人の逮捕者を出し,警察官と支援労働者各1人が死亡するという事態が発生したのをはじめ,妨害鉄塔除去後の同年8月にも,同空港騒音テスト飛行を妨害する目的で,過激派らが空港関連施設に対する火炎びん,時限装置付燃焼物等による放火,警備の警察官らに対する火炎びん,鉄パイプ等による襲撃をゲリラ的に繰り返し,また,同年12月には,数回にわたり,滑走路付近の上空に気球を浮揚させ,又は空港施設に火炎びん投てきするなどして,空港公団の行う第2次騒音テスト飛行及び運輸省の行ういわゆる慣熟飛行の妨害を行っている。53年に入ってからも,いわゆる横堀要塞の差押検証の妨害,開港予定日直前における管制塔への乱入占拠及び破壊,更には,航空関係の電話ケーブルの切断,その他空港関連施設に対する陰湿な妨害行為が執ように続いており,今なお警戒を緩めることのできない状況にある。 その他,過激派各派は,先ごろの狭山事件に関する最高裁判所の上告棄却決定に反発し,その報復攻撃と称して,東京,埼玉,千葉等の各地で,警察施設,拘置所及び裁判関係者宅に放火を繰り返している。このような法治国家の中枢に向けた対権力闘争の動向もまた,最近の注目すべき危険な傾向と言える。 |