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 昭和53年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 麻薬・覚せい剤関係

I-26表 麻薬・覚せい剤等特別法犯検察庁新規受理人員(昭和48年〜52年)

I-6図 覚せい剤取締法違反態様別検挙人員構成比(昭和52年)

 最近5年間における麻薬・覚せい剤関係の検察庁新規受理人員の推移を示すと,I-26表のとおりである。
 麻薬取締法違反の受理人員は,前年より少なく,一貫した減少傾向を保っている。あへん法違反は,昭和51年以降やや増加しているが,その違反態様は少数の不正所持事犯のほかは,大部分がけしの不正栽培事犯である。
 しかし,大麻取締法,覚せい剤取締法の各違反は著しく増加しており,毒物及び劇物取締法違反も,昭和52年は前年より減少したとは言え,依然として高い指数を示していることは,注目を要する。
 特に,昭和52年における覚せい剤取締法違反の検察庁新規受理人員は,2万3,711人であって,48年の1万1,030人と比べると,2倍以上の増加となっている。
 昭和52年における一般司法警察職員による覚せい剤取締法違反の検挙人員は1万4,447人であるが,その年齢別構成比については,20歳未満が5.6%,20歳代が37.3%,30歳代が38.3%,40歳代が16.6%,50歳以上が2.2%というようになっている。次に,違反態様別検挙人員についての構成比を見ると,I-6図のとおり,所持が32.4%(4,683人),使用が27.8%(4,022人),譲渡が22.0%(3,173人),譲受が17.2%(2,480人),密輸入が0.4%(56人),その他が0.2%(33人)などとなっている。
 このような覚せい剤事犯の増加は,覚せい剤をめぐる各種の犯罪を誘発し,I-27表に示すとおり,昭和52年の検挙人員中には,覚せい剤の取引をめぐり,又はそれを入手する目的で犯罪を犯した者が254人,覚せい剤の薬理作用の影響下に犯罪を犯した者が367人含まれている。覚せい剤取引をめぐる犯罪では,恐喝,銃砲刀剣類所持等取締法違反が多く,入手目的のための犯罪では,窃盗が多い。また,覚せい剤の薬理作用の影響下に行った刑法犯259人について見ると,傷害・暴行が59人(22.8%),住居侵入が54人(20.8%),殺人が21人(8.1%),強姦が18人(6.9%),放火が15人(5.8%)などとなっており,覚せい剤の影響による重大な凶悪事犯が少なくない。

I-27表 覚せい剤に関連する各種犯罪検挙人員(昭和52年)

 また,最近では暴力団による組織的・広域的な密売ルートの開拓,拡大等悪質かつ巧妙な事犯が増加していることも看過できないところである。
 この種事犯に対しては,徹底的な捜査により,供給基地,密輸,密売グループやルートの壊滅を図るとともに,刑罰権の厳正迅速な行使が望まれる。
 また,一般国民に対し,麻薬・覚せい剤等の薬物の及ぼす害悪について一層の啓発活動が必要とされるであろう。