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3 少年院運営の新たな試み 昭和24年に新しい法制の下で運営を開始した少年院は,当初,未整備の施設に終戦後の混乱期の影響から多数の少年を収容していた事情などもあったため,その収容期間は比較的短期であったが,その後,30年代に至り,整備が進むに従い,教育内容も充実し,全人格的教育を強調する時代的要請も加わって,収容期間も全般的に長く,かつ,ある程度固定化する傾向にあった。
一方では,非行がそれほど進行しておらず,著しい性格の偏りや心身の障害もなく,反社会的集団にも加入していない少年に,比較的短い期間で矯正教育を授けるのも有効であることから,昭和30年代前半に,大阪府下の和泉少年院において短期処遇の試みが開始された。その後,関係機関からの要望や同院における教育処遇の実績を基にして,他の少年院においても短期の処遇に移行する少年院が増加し,51年末には,12の少年院が短期処遇を実施するに至った。 これに加えて,最近の少年非行が低年齢層化し,いわゆる「遊び型」化の傾向を示し,また,少年非行の態様が一層多様化してきたため,個々の少年の問題性に応じた処遇をより円滑に行い得るよう,短期処遇の拡充を含めた少年院運営の改善が進められることになった。この結果,昭和52年度以降,短期処遇を実施する少年院を12庁から21庁(併設を含む。)に拡充するとともに,これまで実施してきた処遇(便宜上,以下「長期処遇」と称する。)についても,在院者の問題性に対応して処遇の一層の個別化を図り,同時に在院期間を弾力化して社会内処遇との連携を密にし,また,各少年院における処遇の特色化を図るなど,少年院運営の大幅な改善が試みられることとなった。 その改善計画の概要は,次のとおりである。 (1) 短期処遇 短期処遇においては,半開放処遇及び開放処遇を適宜組み合わせ,規律ある集団生活を営ませながら,健全な規範意識の体得を図ること,原則として4箇月ないし5箇月程度の比較的短い期間で保護観察に移行させることなどを処遇方針としている。 そこでは,短期間の組織的・集中的な指導と訓練を行うことにより,少年自身が自己の改善向上に自主的に努めることができるような各種の指導方法が取られる。また,施設内の教育と併せて,院外委嘱職業補導等の社会との連携を持った教育も行われる。その他,教科教育,進路指導及び薬物濫用者に対する治療的処遇も,その個別的な問題に即して施される。 また,非行性が進んでおらず,主たる非行が自動車等の運転に係るものである少年に対しては,特に「交通短期処遇」の対象者として,前述の処遇を含め,主として人命尊重と遵法精神のかん養に重点を置き,開放的な環境の下で,.交通安全教育,生活指導その他の指導を行い,2箇月ないし3箇月程度で保護観察への移行を図っている。 (2) 長期処遇 長期処遇は,前記の短期処遇では矯正教育の効果を十分挙げ得ない少年を対象としている。それらの少年の持つ問題性は多岐にわたるが,その問題性や今後伸長すべき長所等を明確にしたうえ,心身の発達状況,資質の特徴,将来の生活設計等を総合的に検討して,できる限り個別処遇の実を挙げるため,各少年ごとの矯正教育上の重点に応じ,次に掲げる各処遇課程によって処遇を行うこととしている。この処遇においても,きるだけ早期に保護観察に移行させ,在院期間の弾力化を図っている。 ア 生活指導課程 社会性付与のための基礎的な生活指導を必要とする者及び改善の目的や手段を早期に確立し難い者を対象として,各種の生活指導及び教育訓練を中心とした処遇を行うものであり,後記イからオまでの各処遇課程を置く少年院以外の少年院に設けられている。 イ 教科教育課程 義務教育及び高等学校教育を必要とする者を対象として,主として教科教育を行うものであり,このうち義務教育を行う課程は,各矯正管区管内に1庁を設け,また,高等学校教育を行う課程は,喜連川少年院と福岡少年院に設けられている。 ウ 職業訓練課程 職業についての専門的知識及び技能の付与を必要とする者を対象として,労働省認定による職業訓練を実施するものであり,浪速少年院に設けられている。 エ 特殊教育課程 精神薄弱者等を対象として,個々の少年の問題性や能力に即した教育処遇を行うものであり,東京医療少年院,宮川医療少年院及び中津少年学院に設けられている。 オ 医療措置課程 心身に著しい故障があり,主として医療措置を必要とする者を対象として,医療を施すものであり,関東医療少年院と京都医療少年院に設けられている。 以上のような短期処遇あるいは長期処遇を実施するに当たり,各少年院は,その立地条件,職員構成,社会資源等の状況に即して,工夫をこらし,それぞれ特色のある処遇を展開している。ちなみに,全国少年院の配置図はIII-6図のとおりである。 III-6図 短期・長期処遇別少年院配置図(昭和52年6月1日現在) |