前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和52年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/2 

2 鑑別状況

(1) 鑑別人員
 昭和51年における少年鑑別所の鑑別受付状況は,III-38表に示すとおりで,前年に比べて2,376人の減少となっている。これを受付けの種類別に見ると,家庭裁判所からの請求による在宅鑑別と一般からの依頼による一般少年鑑別の減少が顕著であるが,保護観察機関からの依頼による鑑別については,約2倍に増加していることが注目される。

III-38表 少年鑑別所の鑑別受付状況(昭和49年〜51年)

III-39表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和49年〜51年)

III-40表 家庭裁判所関係収容鑑別終了者の年齢層と非行の種類(昭和51年)

 これらの鑑別人員全体のうちから,交通事犯少年の鑑別実施人員を取り出してみると,III-39表のとおり,総数では1,035人の増加となっている。このうち,在宅鑑別が前年に比べて大幅に増加している。
(2) 収容鑑別少年の特性と鑑別判定
 家庭裁判所からの請求により,昭和51年中に収容鑑別を終了した少年の特性を見ることとする。
 年齢層別では,III-40表のとおり,最も多いのは男子年長少年で,次は男子中間少年である。女子では中間少年が最も多く,女子年長少年は,全体の中でも最も少なくなっている。
 年齢層と非行の種類との関係については,男子では,どの年齢層も自動車盗を含む窃盗が最も高率となっている。また,虞犯は,年少少年において高い率を示している。一方,年齢層の高まるに従ってその率が高くなっているのは,強姦・わいせつのほか,暴力行為等処罰に関する法律・銃砲刀剣類所持等取締法,道路交通法の各違反などである。女子では,どの年齢層においても,虞犯と自動車盗以外の窃盗が高率である。特に,虞犯は,中間・年少少年についてはその6割以上を占めており,年齢層が低くなるほど,その率が高くなっている。これに対して,窃盗は年齢層が高まるにつれてその率が高くなっている。このような年齢層と非行の種類との関係は,前年とほとんど変わっていない。
 収容少年の性格とその非行の種類との関係について,法務省式性格検査の結果によって見ると,神経質タイプの少年は強姦・わいせつに,衝動傾向の強いタイプの少年は暴行・傷害・恐喝及び強盗・殺人に,偏執性の強いタイプの少年は道路交通法違反に,付和雷同・追従傾向の強いタイプの少年は暴力行為等処罰に関する法律及び銃砲刀剣類所持等取締法の各違反に,自己防衛的ではあるが社交的で対人接触を好むタイプの少年は業務上過失致死傷において,それぞれ,やや高率を占めていることが認められる。
 知能指数と学歴については,III-41表のとおりであるが,高校在学少年について,男女共に,知能指数110以上という優れた知能の少年が,知能指数79以下の少年よりも多くなっていることは注目される。
 少年の非行の動機について見ると,III-42表のとおりで,男子では,遊び及び利欲がそれぞれ20.6%で最も多く,同調(14.5%)がこれに続いている。女子についても遊びが27.6%で最も多く,次に利欲(13.7%)となっているが,第3位は逃避(9.7%)となっている。非行の動機として,女子の30%近くが遊びであり,男子に4.5%しかない逃避についても,女子では10%弱も見られることは,非行の動機における性差を示すものと言えよう。
 次に,昭和51年中の家庭裁判所関係鑑別終了者1万2,879人の精神診断の結果について見ると;精神薄弱が2.6%,精神病質が0.6%,神経症が0.2%であり,その他のてんかん等を加えると,精神障害と診断された少年は5%弱であり,その比率には,ここ十数年間大きな変動は見られない。

III-41表 家庭裁判所関係収容鑑別終了者の知能指数と学歴(昭和51年)

 昭和51年に審判決定のあった少年について,その鑑別判定人員を示すと,III-43表のとおりである。前年に比べて,在宅保護,初等少年院,中等少年院等の判定が比率においてやや増加し,一方,保護不要,保護不適等の判定は,比率において減少している。

III-42表 家庭裁判所関係収容鑑別終了者の非行の動機の構成比(昭和51年)

 これを審判決定別人員で見ると,III-44表のとおりで,保護観察,初等・中等少年院等が前年に比べてやや増加し,検察官送致が減少しているなど,鑑別判定と審判決定には,ほぼ同様な傾向が見られる。

III-43表 鑑別判定別人員の構成比(昭和49年〜51年)

III-44表 審判決定別人員の構成比(昭和49年〜51年)