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 昭和52年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/3 

3 少年審判

 昭和51年における少年保護事件の全国家庭裁判所の受理人員総数は,III-33表に示すとおりである。一般事件のうち,刑法犯は漸減傾向にあるが,特別法犯は増加傾向にあり,特に50年から51年にかけての急増現象が見られ,虞犯事件や道路交通事件は,おおむね横ばい状態である。このうち,一般事件中の特別法犯の急増は主として有機溶剤吸入による毒物及び劇物取締法違反の増加によるものである。

III-33表 家庭裁判所における少年保護事件の受理人員(昭和47年〜51年)

 家庭裁判所は,受理した少年事件について審判を行うため,家庭裁判所調査官に命じ,又は法務省所属の少年鑑別所に鑑別請求するなどして,少年の資質,環境及び行状について調査を行い,また,少年に対する保護処分決定のため必要があると認めるときは,相当の期間,少年を家庭裁判所調査官の観護に付し,併せて,遵守事項を定めてその履行を命じたり,条件を付して保護者に引き渡したり,適当な施設・団体又は個人に補導を委託したりする,いわゆる試験観察を行う。昭和50年における試験観察決定人員は,一般事件で2万1,194人,道路交通事件で6万457人,計8万1,651人であり,その一般事件中,業務上(重)過失致死傷の占める比率は例年約8割である。
 50年中に終局決定のあった少年のうち試験観察を経た者2万1,795人について,その処分内容を見ると,87.9%に当たる1万9,156人が不処分となっている。
 家庭裁判所は,少年事件について調査を行った結果,所在不明その他の理由によって審判に付することができない場合又は非行が極めて軽微のために審判に付することが適当でない場合には,審判を開始しない旨の決定をする。審判を開始するのが相当と認められる場合には,審理を行ったうえで,児童福祉法の規定する措置を相当と認めるときは,都道府県知事又は児童相談所長に送致し,16歳以上の少年について刑事処分を相当と認めるときは,検察官に送致する。また,保護処分に付するのを相当と認めるときは,[1]保護観察所の保護観察に付すること,[2]教護院又は養護施設に送致すること,[3]少年院に送致することのいずれかの保護処分を決定する。保護処分に付することができないか,又はその必要がないと認める場合には,不処分の決定を行う。なお,犯罪少年として調査又は審判を行ったが,本人が既に20歳以上であることが判明したときは,検察官に事件を送致する。これらの処分状況は,III-34表のとおりで,終局決定総数中に占める審判不開始及び不処分の割合の合計は約8割に達している。また,家庭裁判所の終局決定のうち,道路交通事件を除く一般事件について,昭和51年における処分状況を10年前の41年のそれと比較すると,III-4図に示すとおりで,審判不開始及び不処分の比率が高くなり(74.5%から84.8%へ),これに伴い,刑事処分を相当とする検察官送致,少年院送致,保護観察等の決定の比率が低くなっている。

III-34表 少年保護事件の終局決定別既済人員(昭和47年〜51年)

III-4図 終局決定別既済人員の比較(一般保護事件)(昭和41年,51年)

 昭和50年に終局決定のあった一般事件のうち,刑法犯,特別法犯及びそれらの主要罪名について処分状況を見たのが,III-35表である。審判不開始及び不処分の比率の合計が比較的高いのは,暴行,窃盗,銃砲刀剣類所持等取締法違反などであり,比較的低いのが,殺人,強姦,強盗,放火などである。また,刑事処分相当を理由とする検察官送致の比率が比較的高いのは,殺人,業務上(重)過失致死傷,強姦,強盗などである。しかし,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯全体を見ると,刑事処分相当として検察官送致になるものの比率は,0.7%にすぎない。保護観察の比率の高いのは,強姦,強盗,売春防止法違反,放火,殺人,恐喝,傷害などであり,少年院送致の比率の高いのは,殺人,強盗,放火,強姦,売春防止法違反などである。
 家庭裁判所が刑事処分相当と認めて検察官に送致した少年事件については,公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がない場合,送致を受けた事件について犯罪の情状などに影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため訴追を相当でないと思料する場合又は送致後の情状により訴追を相当でないと思料する場合を除いて,検察官は,公訴を提起しなければならない。このようにして起訴され,第一審裁判所において有罪の裁判を受けた少年の科刑の概況を見ると,III-36表のとおりである。昭和51年に有罪となった少年の総数は3万7,044人で,前年まで数年間にわたって減少傾向にあったが,51年は前年に比べて2,504人の増加となっている。
 また,刑法犯により,懲役又は禁錮に処せられた者の執行猶予率を見ると,昭和51年は,少年の刑法犯総数の71.0%である。少年の刑法犯総数における執行猶予率は,36年に44.5%と初めて40%台に上昇し,42年には50%台,46年に60%台に達し,51年には70%を超えた。なお,刑法犯総数における執行猶予率を年齢層別に比較すると,起訴時16歳・17歳の者については76.6%,18歳・19歳の者については70.4%となっている。

III-35表 罪名別・終局決定別一般保護事件処分状況(昭和50年)

III-36表 少年に対する主要罪名別科刑概況(第一審有罪人員)