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恩赦には,[1]大赦(有罪の言渡しの効力を失わせ,又は公訴権を消滅させる。),[2]特赦(有罪の裁判が確定した特定の者について,その有罪の言渡しの効力を失わせる。),[3]減刑(裁判で言い渡された刑や刑の執行を減軽し,又は刑の減軽に併せて執行猶予の期間をも短縮する。),[4]刑の執行の免除(裁判で宣告された刑そのものは変更しないで,刑の執行だけを免除する。)及び[5]復権(有罪の言渡しを受けたために資格を喪失し又は停止されている者に対して,これを回復させる。)の5種がある。
この恩赦は,政令恩赦として,又は個別恩赦として行われる。政令恩赦は,一般恩赦ともいわれ,政令で罪又は刑の種類,基準日等を定め,これに該当する者について,一般的に恩赦の効力を発生させるもので,国家の慶弔事等重要な行事に際して行われる。戦後では,第二次大戦終結,日本国憲法公布,平和条約発効,国連加盟,皇太子殿下御結婚,明治百年記念,沖縄復帰記念などの機会に行われてきた。他方,個別恩赦には,政令恩赦施行の際等に内閣の定める基準により,一定期間を限って行われる特別恩赦及び刑事政策的見地から常時行われる常時恩赦がある。このうち,特に常時恩赦は,個々の事案について,その犯情,行状,犯罪後の状況,再犯のおそれ等を調査し,総合的に判断して行われる。それは,刑務所等施設の長,保護観察所長又は検察官から,職権により又は本人の出願に基づいて,中央更生保護審査会(衆・参両議院の同意を得て法務大臣が任命する委員5人で構成される。)に特赦,減刑,刑の執行免除又は復権の上申がされ,中央更生保護審査会がその理由があるものと認めて法務大臣に恩赦の申出をした者に対して,閣議で恩赦が決定され,次いで,内閣総理大臣から奏請して,天皇の認証を受け,その効力が発生する。 最近5年間の常時恩赦の受理・処理状況は,II-80表に示すとおりである。昭和51年に中央更生保護審査会が受理した恩赦上申総数は395人で,その内訳は,前年からの繰越人員が164人,新受人員が231人である。新受人員を上申庁別に見ると,保護観察所が196人(84.8%),刑務所・拘置所が6人(2.6%),検察庁が29人(12.6%)である。 次に,恩赦の上申がなされ内閣において恩赦相当と決定された人員は223人,また,中央更生保護審査会によって恩赦の申出を不相当とされた人員は48人で,既済総人員中,恩赦相当と決定された者の率は82.3%である。 恩赦相当と決定された者を,恩赦の種別で見ると,復権が155人(69.5%)で最も多く,次いで,刑の執行免除が45人(20.2%),減刑が19人(8.5%),特赦が4人(1.8%)の順となっている。 常時恩赦では,保護観察所長から上申される復権の数が非常に多い。復権は,犯罪前歴者が背負わされている各種の資格制限や心理的らく印を撤廃し,本人の社会復帰を一層促進させるのに有効なもので,刑事政策的観点から,その積極的運用が期待される。 II-80表 常時恩赦の受理及び処理人員(昭和47年〜51年) |