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3 執行猶予制度の機能と運用 刑の執行猶予の刑事政策的機能は,短期自由刑の弊害を避け,執行猶予が取り消された場合は刑を執行されるという心理強制を背景として犯罪者の自戒による改善更生を期待することにある。刑罰の執行を避けるという点では,起訴猶予と同じ目的を持つものと言えるが,刑の執行猶予は,裁判所で明確に有罪の宣告が行われ,また,再犯の場合の執行猶予の取消しが心理強制となって働く点で,それのない起訴猶予に比べて再犯防止の機能が一層強化されている。
II-26表 第一審懲役・禁錮言渡人員中の執行猶予人員と比率(昭和25年,30年,35年,40年,45年〜50年) II-26表は,第一審で有期の懲役又は禁錮刑に処せられた者の中に占める執行猶予に付された者の比率(以下「執行猶予率」という。)を見たものである。昭和25年に46.0%であった執行猶予率は,その後次第に上昇し,50年では59.7%となっている。また,執行猶予人員中保護観察に付された者の数は,30年から35年にかけて著しい増加を示しているが,その後はほぼ横ばいの状態にある。ちなみに,フランス司法省の司法統計(Compte General, Ministere de la Justice,1973)によると,フランスにおいて軽罪により拘禁刑を言い渡された者についての執行猶予率は,1960年では39.3%であったが,逐年上昇し,1973年では58.0%となっている。フランス及び西ドイツでも,刑の執行猶予制度が採用されてからその適用範囲が次第に拡大されてきており,今や,社会内処遇の拡大は,我が国を含めて,各国共通の刑事政策の重要な課題となっていると言えよう。 II-4図 通常第一審罪種別執行猶予率の推移(昭和24年〜50年) 次に,通常第一審で有期の懲役又は禁錮刑に処せられた者について罪種別に昭和24年以降の執行猶予率の推移を見ると,II-4図のとおりである。業過を除く刑法犯の執行猶予率は,その他の罪種のそれに比べて常に低く,また,24年以降40.2%ないし53.8%の範囲内で変化の少ない推移を示しているのに対し,他の罪種の執行猶予率は,時代の変遷とともに著しい変動を示している。このことは,業過を除く刑法犯については,その犯罪動向や量刑のすう勢がさほど変化していないのに対して,業務上(重)過失致死傷・道交違反などの交通犯罪や麻薬・覚せい剤関係その他の特別法犯については,その犯罪動向や事犯防止に関する時代的・社会的要請が量刑にも相当程度影響を及ぼしていることを示すものであろう。 |