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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節/1 

第3節 暴力団犯罪

1 暴力団の概況

 暴力団の団体数及び構成員数は,昭和38年ころを頂点として減少傾向を続けている。51年末現在で警察庁がは握している暴力団は2,555団体,その構成員は10万9,955人であり,前年末に比べて団体数で51団体,構成員数で87人の減少となっている。しかし,その全体としての減少にもかかわらず,いわゆる広域暴力団(2以上の都道府県にわたって組織を有する暴力団をいう。)の占める比率は逐年上昇しており,暴力団の広域化及び系列化が続いている。
 暴力団相互の対立抗争事件は,昭和51年では前年より23件減少して66件となっているが,犯行に銃器が使用された事件の占める比率は,45年以降逐年上昇し,51年はその最高の62.1%となっている。犯行の態様も白昼,繁華街で発砲するなど,大胆かつ悪質化しつつある。51年中に対立抗争事件で死亡した者は24人で,前年に比べて事件数が減少した割には死亡被害者数が減少しておらず,しかも,その被害は一般市民にまで及んでいる。

I-29表 暴力団関係者押収凶器数(昭和47年〜51年)

 最近5年間の暴力団関係者からの凶器の押収状況を見ると,I-29表のとおりである。押収凶器の総数は逐年増加しており,とりわけ,けん銃の押収数の引き続いての増加には警戒を要するものがある。昭和51年におけるけん銃押収数は戦後の最高を記録したが,その71.1%は模造けん銃を改造したものであり,前年に比べると,この改造けん銃は若干減少し,真正けん銃の増加が見られる。こうしたけん銃押収数の増加の背景の一つとして,暴力団の対立抗争がその武装化を促進し,大規模なけん銃の密輸入・密造・密売事件を多発させていることが挙げられよう。
 最近の暴力団は,資金を求めて,総会屋,金融債権取立てその他の暴力を背景とする知能犯を犯す傾向があり,また,従前からの資金源であった覚せい剤取引を一層拡大しつつある。