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 昭和51年版 犯罪白書 第3編/第4章/第3節/2 

2 勧誘売春婦と周旋等関係売春婦の特性

 以下,勧誘売春婦1,376人と周旋等関係売春婦1,664人とを対比しながら,それぞれの持つ特性を見ることとする。
 まず,売春と職業との関係を見ると,周旋等関係売春婦は,バー,キャバレーのホステス,飲食店従業者,旅館女中が13.8%,その他の接客サービス業従事者が39.8%であって,この両者が全体の53.7%を占め,無職者は33.8%にすぎない。これに対して,勧誘売春婦については,無職が圧倒的に多くて76.7%を占め,接客サービス業従事者は10%に満たない。
 次に,売春をする主たる理由を見ると,III-139表のとおりである。勧誘売春婦においては,「生計を維持するため」と「困窮」の多いことが日立つ。周旋等関係売春婦においても生計維持が最も多いが,その割合が低下し,「経済的余裕を得るため」がこれに次いでいる。ここに,前者は,売春を生活の手段とし,後者は,売春によって生活の余裕を得ようとするという動機面での差異が認められる。

III-139表 売春婦の態様別・理由別人員(昭和50年)

 なお,「他からの強要」を売春の理由として挙げている者が,勧誘売春婦では0.4%にすぎないのに対して,周旋等関係売春婦では7.8%に達している。このことは,売春を強要されて搾取の対象となっている売春婦もなおかなりいるものとして,注目を要する。
 勧誘売春婦と周旋等関係売春婦との問には,売春組織との関係においても,かなりの差異が見られる。勧誘売春婦では,売春組織との関係を有する者は1.3%にすぎないのに対し,周旋等関係売春婦では,約40%が売春組織と関係を持っている。後者のうち,売春契約を結んでいる者が約40%,前借金を供与されている者が6.1%いる。
 売春をする場所は,勧誘売春婦の場合は,「連れ込み旅館」が73.1%,「一般旅館・ホテル」が20.6%であって,この二つが売春をする場所の93.7%を占めている。これに対して,周旋等関係売春婦の場合は,「稼働先」が36.1%,「連れ込み旅館」が35.0%,「一般旅館・ホテル」が18.1%であって,「稼働先」が売春の場所であるものが多い。
 最後に,売春婦の配偶者関係について見る。勧誘売春婦は,総数1,376人のうち,736人が夫(内縁の夫を含む。以下同じ。)を有し,556人は夫と同居している。夫のうち,いわゆる「ヒモ」的関係にある者は108人である。周旋等関係売春婦は,総数1,664人中,759人が夫を有し,570人が夫と同居している。夫のうちいわゆる「ヒモ」的関係にある者は187人である。なお,「ヒモ」の有無及び「ヒモ」との関係を示すと,III-140表のとおりで,夫でない「ヒモ」もかなりいる。

III-140表 「ヒモ」の有無及び「ヒモ」との関係(昭和50年)