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 昭和51年版 犯罪白書 第3編/第4章/第3節 

第3節 最近の売春犯罪の実態

 前述のような売春防止法違反の検挙(送致)人員の減少が,直ちに現実のこの種事犯の減少を意味するものでないことは,言うまでもない。この種犯罪は,その性質上暗数が多いと考えられるが,最近の売春事犯は,形態が多様化するとともに,手段・方法においてもますます巧妙化・潜在化の度を増しつつあり,その実態のは握が困難となってきている。
 最近,法務省刑事局が売春犯罪の実態をは握するための調査を実施した。これは,売春防止法違反等によって,昭和49年7月1日から50年6月30日までの1年間に裁判が確定した者(上訴審確定事件及び略式命令によるものを含み,保護処分に付された少年事件を除く。)及び起訴猶予処分に付された者並びにその関係売春婦の合計4,351人を対象とし,検察庁の保管記録に基づいて調査したものである。対象者の内訳は,[1]売春防止法5条違反(以下「勧誘売春婦」という。)の1,376人,[2]同法6条違反(以下「周旋事犯」という。)の575人,[3]その他の売春防止法違反並びに刑法224条ないし227条,婦女に淫行をさせる行為と関係のある犯罪に係る児童福祉法,職業安定法及び労働基準法各違反(以下「助長等事犯」という。)の736人,[4]これら周旋事犯及び助長等事犯に関係した関係売春婦(以下「周旋等関係売春婦」という。)の1,664人である。周旋等関係売春婦は,自らは勧誘しないで,他人の周旋,助長等の行為を受けて売春している者であり,管理売春における被管理者をも含んでいる。
 この調査によって明らかとなった最近の売春防止法違反の特徴を摘記すると,次のようである。
[1] 勧誘売春婦は,高年齢化し,かつ,同種犯罪を繰り返している者が多い。
[2] 勧誘売春婦は,無職者が,生計を維持するため,連れ込み旅館等で売春するのが多いのに対し,周旋等関係売春婦は,接客サービス業に従事している者が,経済的余裕を得るため,売春組歳との関係を持ちながら,稼働先で売春するのが比較的多い。両者を通じ,約半数には夫がある。
[3] 周旋事犯は,無職者が街娼等の売春を周旋するのが多く,大都市に集中しているのに対し,助長等事犯は,接客サービス業関係者が従業者の売春を助長等するのが多く,主として,中小都市で発生している。
[4] 学生・生徒の売春も相当数ある。
 以下,これらの諸点について,調査の結果を参照しつつ解説を試みることとする。