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 昭和51年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/2 

2 少年検察

 昭和50年の少年被疑事件の検察庁新規受理人員は38万4,553人で,その内訳は,刑法犯が総数の43.4%に当たる16万6,910人,道交違反が総数の55.2%に当たる21万2,166人,その他の特別法犯が総数の1.4%に当たる5,477人となっている。50年においては,前年に比べて,刑法犯が754人(0.5%)の増,道交違反が6,644人(3.2%)の増,その他の特別法犯が1,210人(18.1%)の減,総数において,6,188人(1.6%)の増となっている。
 道交違反を除く新規受理人員について,主要罪名別の人員及びその百分比を前年と比較したのが,III-33表である。刑法犯については,前年と同様,最も多いのは窃盗(52.4%〉であり,これと業務上(重)過失致死傷(28.2%)の両者で刑法犯全体の8割を占めている。以下,傷害,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反の順となっている。昭和45年以降減少傾向に転じた業務上(重)過失致死傷の受理人員は,本年も引き続き減少し,これとは逆に,横領については,43年以降の増勢が続いている。次に,特別法犯の新規受理人員の中では,例年と同様,銃砲刀剣類所持等取締法違反が多いが,38年以降は減少を続けている。しかし,その構成比においては,わずかながら前年より増加が見られる。

III-33表 少年被疑事件の罪名別検察庁新規受理人員(昭和49年・50年)

 III-34表は,昭和50年新規受理人員について,年齢層別にその比率を見たものである。18歳・19歳の年長少年が最も多く,総数の45.8%を占めている。

III-34表 少年被疑事件の年齢層別検察庁新規受理人員(昭和50年)

 検察官は,少年の被疑事件について,捜査を行い,犯罪の嫌疑があると認められる場合又は嫌疑がなくても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料する場合には,その事件を家庭裁判所に送致しなければならない。昭和50年中における検察庁の少年被疑事件処理状況を見ると,既済総数(家庭裁判所からいわゆる逆送を受けた者の処理数を除く。)は41万8,772人,検察庁間の移送を除くと38万3,773人で,このうち,家庭裁判所送致は99.7%に当たる38万2,541人である。その他は,年齢超過後の処分の133人,不起訴(嫌疑なし)・中止の1,099人である。
 検察官は,少年事件を家庭裁判所に送致するに当たり,少年の処遇に関して意見を付することができる。昭和50年中の家庭裁判所終局決定人員総数について,検察官の処遇意見をその意見別に見たのが,III-5図である。総数の39.3%が刑事処分相当,2.4%が少年院送致相当,12.8%が保護観察相当,45.5%がその他の意見となっている。罪種別に見ると,刑事処分相当の意見を付した割合が最も多いのは道路交通法違反で,刑法犯がこれに次いでいるが,過失傷害を除く刑法犯について見ると,その割合は2.6%にすぎない。一方,少年院送致相当の意見は,過失傷害を除く刑法犯について最も多く,保護観察相当意見は,特別法犯及び過失傷害を除く刑法犯について多くなっている。

III-5図 罪種別検察官処遇意見の比率(昭和50年)

 次に,この同じ対象者に対する検察官の処遇意見を年齢層別に見たのが,III-35表及びIII-6図である。18歳・19歳の年長少年に対する検察官の処遇意見でその割合の最も多いのは刑事処分相当で,65.9%を占めているが,16歳・17歳の中間少年では25.9%と少なくなり,逆に,保護観察相当及びその他の意見は,年少になるに従って高率となっている。このように,年齢層によって処遇意見の比率にかなりの差異が認められる。

III-35表 罪種別・年齢層別検察官処遇意見の比率(昭和50年)

III-6図 年齢層別検察官処遇意見の比率(昭和50年)

 検察官が取り扱う少年事件には,このほかに,家庭裁判所から刑事処分相当として,又は年齢超過のため,検察官に逆還されるいわゆる逆送事件がある。送致を受けた事件は,年齢超過による場合を除いて,検察官は,原則として,公訴を提起しなければならないことになっている。
 昭和50年中に家庭裁判所から逆送された少年の数は5万1,382人であるが,そのうち,刑事処分相当の理由による者が,88.6%に当たる4万5,532人(16歳・17歳6,464人,18歳・19歳3万9,068人)であり,残りの11.4%に当たる5,850人は,年齢超過の理由によるものである。また,刑事処分相当の理由に上る4万5,532人のうち,刑法犯は17.6%,特別法犯は0.2%,道交違反は82.1%となっているが,このうち,18歳・19歳の年長少年は,刑法犯で92.6%,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯で95.8%,特別法犯で96.0%,道路交通法違反で84.3%を占めている。
 そこで,家庭裁判所から刑事処分相当を理由として逆送された事件について,昭和50年中の検察庁における処理状況を見ると,III-36表のとおりである。処理総数4万2,286人のうち,道交違反が83.8%を占め,刑法犯は16.0%である。起訴された者の内訳を見ると,起訴総数3万8,067人のうち,84.7%が道交違反によって占められ,刑法犯は15.1%で,特別法犯は0.2%にすぎない。なお,刑法犯の90.1%までが業務上(重)過失致死傷である。

III-36表 逆送少年被疑事件の罪名別処理状況(昭和50年)

 また,起訴総数の97.2%が略式命令請求又は即決裁判請求であり,公判請求は2.8%にすぎない。起訴のうちに占める公判請求率を見ると,刑法犯は16.3%,特別法犯は87.9%で,道交違反はわずかに0.2%にとどまっている。公判請求人員総数は1,061人で,刑法犯が88.2%を占め,主要罪名別に見ると,業務上(重)過失致死傷の437人が最も多く,以下,窃盗,強制わいせつ・強姦,傷害の順になっている。
 次に,昭和50年中に起訴された少年について,年齢層別に各起訴区分の構成比を見たのが,III-37表である。公判請求の大部分を占める刑法犯では,92.0%までが年長少年である。また,略式命令請求(即決裁判請求を含む。)では,年長少年の事件は,総数の84.5%,刑法犯の91.6%,特別法犯の87.5%,道交違反の83.5%を占めている。なお,中間少年に関する公判請求の大多数は,業務上(重)過失致死傷で,それ以外の罪名によって公判請求をされた者は29人にすぎない。

III-37表 逆送少年被疑事件の年齢層別起訴区分(昭和50年)