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2 少年犯罪の特質 (1) 犯行の動機 最近の少年非行の一つの特数として,いわゆる「遊び型非行」が挙げられる。遊び型非行を明確に定義することは困難であるが,常識的には,「遊戯的な動機で行う軽微な犯罪や問題行動」を意味し,規範意識の欠如ないしは希薄さを基調とする反社会的行動と見ることができよう。
III-24表は,法務省特別調査において犯行の動機が「遊び」と判定された少年(1,635人)について,それ以外の動機によると判定された少年(7,033人)と対比させて,犯行態様等の特性を見たものである。この遊び型犯罪少年は,自動車との関連の有無によって大別することができるので,自動車に関連のある犯行をした少年732人(遊び型犯罪少年総数の44.8%)と自動車に関連のない犯行をした少年903人(遊び型犯罪少年総数の55.2%)の二群に分けて考察する。 III-24表 動機別犯罪少年の諸特性(昭和50年) 自動車に関連のある遊び型犯罪は,道路上ないし建物周辺の犯行が多く,大部分が自動車を対象とする窃盗である。このことから,この種犯行は,自動車(オートバイを含む。)の窃取であることがわかる。これに対し,自動車に関連のない遊び型犯罪は,デパート・スーパーにおけるものが三分の一を占めており,この種犯行には商品の万引きが多く含まれているものと推測される。この両群を通ずる犯行の特性としては,[1]年少少年によるものが多いこと,[2]窃盗が大部分であること,[3]偶発的犯行が多いこと,[4]共犯者のある犯行が多いこと等を挙げることができ,犯行の動接が「遊び」と判定されたことも理解できる。 しかし,補導歴のある者の占める割合は,他の動機による犯罪少年と大差なく,また,甘やかし・過保護等保護者の指導状況に問題のある者も多い。これらの特性は,少年の健全育成の観点からは,この種犯行も軽視すべきではないことを示唆するものであろう。 (2) 犯行の集団性 ア 共犯及び非行集団 少年犯罪の一つの特色として,共犯事件の多いことが挙げられる。III-25表の示すように,昭和50年の交通関係業過を除く少年刑法犯検挙件数のうち,共犯者のある犯行は37.7%を占め,成人の約3倍という高率を示している。これを主要罪名別に見ると,恐喝の54.0%が最も多く,以下,強盗,傷害,暴行等の順となっている。
III-25表 罪名別共犯事件の検挙件数(昭和50年) 更に,少年犯罪は,しばしば集団的に犯される。昭和50年の交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員11万6,782人のうち非行集団に関連のある2万8,301人(24.2%)について,その関連の状況を示したのが,III-26表である。集団形態別では,学校集団が半数を占め,非行形態別では,窃盗集団が同様に半数を占めている。III-26表 非行集団の集団形態及び非行形態別構成比(昭和50年) イ 暴走族 最近においては,非行集団の中でも,暴走族が大きな社会問題となっているので,特にこれを取り上げて検討することとする。暴走族とは,常識的には,「構成員の各自が自動車等を運転して集団的かつ意図的に交通違反を犯し又は犯すおそれのある集団又は組織」と言えるであろう。しかし,最近における暴走族は,単に,集団による道路交通関係法規の違反にとどまらず,暴走族間の対立抗争事件や一般人に対する刑法犯を犯す傾向が顕著となっている。
III-27表は,昭和50年において警察庁が実施した暴走族の実態調査の中から,その集団規模と地域別の分布状況とを取り出したものである。暴走族の集団数としては,東京が最も多く,首都圏及び近畿地方がこれに続くが,その他の地方は比較的少数であり,暴走族が大都市を中心として形成されやすいことを示している。 III-27表 暴走族集団の規模別・地域別分布状況(昭和50年) また,集団規模を構成員数の多寡から見ると,総数では,20人前後の小集団が多く,100人以下の集団を合計すると約74%に達するが,地域別では,東京及び首都圏に大泉模集団が,その他の地域に中・小規模集団が集中するなど,暴走族形成における地域的格差と,大都市における多衆集団化傾向を指摘することができる。次に,昭和50年の暴走族による刑法犯等の罪名別検挙状況を,前年との比較において示したのが,III-28表である。暴走族による犯罪としては,最高速度違反を中心とする道路交通関係法規の違反が大多数を占め,以下,刑法犯,特別法犯(道路交通法を除く。)の順となっている。前年と比較して,総数は約二分の一に激減しているが,これは,主として道路交通関係法規違反の減少によるものである。これに引き替え,刑法犯はほぼ倍増し,特に,公務執行妨害及び兇器準備集合の増加が著しい。このことは,暴走族による犯罪が,単に自動車等で道路上を暴走するといった性格のものから,悪質な一般刑法犯へと質的な変化を遂げつつあることを示すものとも考えられ,今後の動向には十分な関心を払う必要がある。 III-28表 暴走族の罪名別検挙件数(昭和49年・50年) (3) 再犯少年 昭和49年に家庭裁判所が取り扱った一般保護少年について,前処分の有無と罪名との関連を見ると,III-29表のとおりである。処分歴のある少年の割合は,強盗が最も高く,以下,強姦,殺人,恐喝等の順となっている。これらの凶悪犯や粗暴犯が非行性の進んだ少年によって犯されている点に注目する必要があろう。
III-29表 一般保護少年の非行別前処分の有無(昭和49年) 更に,昭和49年における一般保護事件の終局決定別にそれぞれの処分決定と前回の終局決定との関連を見たのが,III-30表である。「前処分あり」の割合が大きいのは,保護処分のうちの少年院送致及び検察官送致の者であるが,前処分のある者の処分の内訳を見ると,その処分内容は前処分と密接に関連しており,一般に,軽い処分から重い処分へと段階的に処分決定がなされる傾向がある。III-30表 一般保護少年終局決定別前処分の有無・前回終局決定の比率(昭和49年) (4) 自動車との関連 モータリゼーションの進行は,少年の自動車利用を日常化するとともに,自動車への魅力や関心の増幅傾向を強めている。
法務省特別調査によって,最近5年間における少年犯罪の自動車関連率を見たのが,III-31表である。ここにいう自動車関連率とは,自動車を犯罪の対象とするもの,自動車を手段とするもの等,何らかの意味で自動車と直接の関連がある犯行が総数中に占める割合のことである。 III-31表 少年犯罪の罪名別自動車との関連率(昭和46年〜50年) 昭和50年においては,自動車に関連のある犯罪は,20.5%に達している。そのうち,「関連率の高いのは,強姦(31.3%),横領(26.0%),窃盗(23.4%)等である。強姦は,自動車を犯行に利用するもの,横領は自動車を領得するもの,窃盗は,自動車窃取と自動車上の金品の窃取が中心である。(5) 被害者との関係 法務省特別調査によって,犯罪少年と被害者との関係を見ると,III-32表のとおりである。無関係が67.3%で最も多く,次いで,顔見知り,友人・知人となっており,親族は極めて少ない。罪名別に見ると,無関係が多いのは,強制わいせつ,強盗,横領,顔見知りが多いのは,強姦,暴力行為等処罰法違反,傷害,友人・知人が多いのは,強姦,傷害,暴行等となっている。
III-32表 罪名別犯罪少年と被害者との関係(昭和50年) |