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 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第5章/第3節/2 

2 更生緊急保護対象者

 更生緊急保護については,先に第2編第4章第4節で述べた。昭和50年中に保護観察所へ援護的措置を求めてきたこの種の対象者は,9,874人(刑の執行終了者7,506人,刑の執行猶予者678人,起訴猶予者1,685人,補導処分終了者5人)であるが,これらの者の中には,刑期の満了のゆえに犯罪傾向が矯正されないまま釈放された者や,繰り返して犯す犯罪が軽微であるがゆえに起訴されないで釈放された者がかなり含まれていると思われる。そこで,これらの者の特性に関して,法務総合研究所が行った「更生緊急保護対象者の特性についての調査研究」の結果に基づいて若干の検討を試みる。この調査は,50年1月13日から同年3月15日までの間に全国38の保護観察所に援護の措置を求めてきた者(ただし,交通事件対象者,女子を除く。)について調査したものであるが,ここでは,更生緊急保護対象者の中で多くを占めている満期釈放者及び起訴猶予者について述べる。
 まず,年齢層別人員を見ると,満期釈放者及び起訴猶予者のいずれの群も,30歳〜50歳の稼働能力が十分にある年齢層が約66%を占めている。
 刑務所入所度数を見ると,II-86表に示すとおりで,満期釈放者の50%以上が5回以上の入所経験を持っており,起訴猶予者では,入所経験のある者の占める割合は51.5%で,5回以上の経験を持つ者が20%を超えている。

II-86表 更生緊急保護対象者の事件種別入所度数

 更生緊急保護対象者は,一般に定着性がなく何度も職場を変える傾向があるが,この調査でも,5回以上の転職があった者の占める割合は,満期釈放者65.4%,起訴猶予者55.4%となっている。更に,嗜癖の状況を見ると,過度の飲酒癖を持つ者は,満期釈放者で20.3%,起訴猶予者で19.4%を占めており,また,賭博の経験ある者の占める割合は,満期釈放者23.7%,起訴猶予者25.5%となっている。
 以上のような調査結果からも,更生緊急保護対象者には,平素の乱れた生活態度のため何回も犯罪を繰り返している者が相当数存在していて,これらの犯罪傾向の進んだ者に対する適切な施策を講ずることの必要性が示唆される。同時に,法律上は更生緊急保護の対象ではあっても,保護観察所に援護の措置を申し出ることもなく再犯を繰り返している群が存在することを無視することはできない。これらの者をも含めて,有効・適切な援助が差し伸べられるような,制度上の改善や処遇内容の向上が望まれる。