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1 概説 前節において保護観察の対象となる者及び保護観察の実施状況について述べたが,現行法は,更に,保護観察に付されない犯罪者のうち次に掲げる6種類の者に対して,一定の要件の下に,その更生を助けるための保護の措置を執ることができるものとしている。この措置が,更生緊急保護の措置である。
[1] 懲役,禁錮又は拘留につき,刑の執行を終わった者 [2] 懲役,禁錮又は拘留につき,刑の執行を免除された者 [3] 懲役又は禁錮につき,刑の執行猶予の言渡しを受け,その裁判が確定するまでの者 [4] 懲役又は禁錮につき,刑の執行猶予の言渡しを受け,保護観察に付されなかった者 [5] 起訴猶予処分になった者 [6] 婦人補導院から退院した者及び補導処分の執行を受け終わった者 これら6種類の対象者に対して更生緊急保護法に基づく援護の措置が行われるのであるが,それらの者は,既に釈放され,しかも保護観察の外にある者であるから,本人の申出があった場合に限り,必要かつ相当の限度で実施できるものとされている。また,更生緊急保護の措置は,刑事上の手続により身体の拘束を受けていた者が釈放された後,6箇月を超えない範囲で,本人の意思に反しない限りで実施できるとされているなど,その措置を執るに当たっての要件と期間について限定が置かれている。 第3節で述べた保護観察対象者に対しては,保護観察における補導援護の内容自体として,[1]教養訓練の手段を助けること,[2]医療及び保養を得ることを助けること,[3]宿所を得ることを助けること,[4]職業を補導し,就職を助けること,[5]環境を改善し,調整すること,[6]更生を遂げるため適切と思われる所への帰住を助けること,[7]その他本人の更生を遂げさせるために必要な措置を執ることなどが定められている。更に,保護観察所長は,保護観察に付されている者が,負傷若しくは疾病のため又は適当な仮泊所,住居若しくは職業がないため,更生を妨げられるおそれがある場合には,公共の衛生福祉その他の施設から医療,食事,宿泊,職業その他必要な救護を得るよう援護しなければならない。もしも必要と思われる応急の救護,援護が得られない場合には,自ら救護,援護の措置を行い,これに必要な費用を予算の範囲内で支払うべきことが義務付けられている。このように,保護観察期間中は,いつでも必要な援護の措置を執ることができるので,更生緊急保護の措置は,保護観察対象者にはその必要を見ないわけである。もっとも,仮出獄後6箇月以内に仮出獄期間が満了した仮出獄者が更生緊急保護の措置を受けることはあり得る。しかし,刑事上の手続による身体の拘束を伴わない者,罰金・科料等の刑に処せられた者,少年院を退院した者,仮出場を許された者,労役場留置の執行を終わった者等は,いずれも,現行法制上,更生緊急保護の対象から除かれている。 更生緊急保護における保護期間及び保護対象の再検討は,今後の大きな課題の一つであると言えよう。 |