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4 教育活動 受刑者に対する教育活動は,入所時教育,出所時教育,教科教育,通信教育,生活指導,篤志面接委員による助言指導,体育及びレクリエーション指導などの形で行われており,教育活動の実施に当たっては,ラジオ,テレビ,映画,ビデオ・テープレコーダー等の視聴覚教育の方法が活用されている。
入所時教育は,新たに入所した受刑者に対し,受刑の心構え,施設の機構,所内規則,処遇の概要,保護関係の調整,釈放後の生活設計等の教示及び指導に重点を置いて行われている。 教科教育については,義務教育未修了者に対して,特に必要と認めるときは必要な課程を履習させるほか,義務教育修了者中にも学力の著しく低い者が少なくないので,これらの者に対して,国語,数学等基礎的教科が補習教育として行われている(少年受刑者については,第3編第1章第6節参照)。また,義務教育修了者のうち向学心のある者に対しては高等学校通信制課程を受講させている。なお,職業指導の一環としても,珠算,簿記等の資格を取得できる科目についての指導も行われている。昭和50年中の教科教育履習人員は4,070人で,その内訳は,義務教育修了者2,363人,同未修了者1,195人,高等学校中退者240人,同卒業者178人等となっている。 また,通信教育は,昭和24年以来実施され,主として学校通信教育と社会通信教育により,受刑者に一般教養向上の機会を与えている。受講者には,受講に要する費用の全額を国が負担する公費生と,原則として受講者自身が負担する私費生とがあるが,51年3月までの過去1年間の受講生は,公費生・私費生合わせて2,220人で,受講生の多い講座名は,書道・ペン習字,簿記・事務,自動車,英語,高校講座,孔版,建築,校正,和・洋裁,編物等となっている。 生活指導としては,受刑者の日常生活を通じて,しつけ教育,規律訓練,一般講演,読書指導,社会見学,クラブ活動,集会,委員会活動(給食,図書,放送等の各委員会活動)などを行うとともに,個別又は集団カウンセリングが実施されている。このような生活指導は,受刑者の自覚に訴え,規則正しい生活及び勤労の精神を養わせ,共同生活を円滑に営み得るような態度,習慣,知識,技術等をかん養することをねらいとするもので,分類級ごとにその処遇内容に変化が付けられている。 この種の教育活動は,受刑者の日常生活を通して,又は平日の夜間,土曜日の午後,休日などに行われ,その指導には,施設職員だけでなく民間の学識経験者が招へいされている。 篤志面接委員制度は,受刑者各人の持つ精神的な悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などを巡る問題につき,民間の学識経験者の助言指導を求めて,その解決を図ろうとするもので,昭和28年実施以来,逐年活発化し,施設の処遇に定着している。50年末現在の篤志面接委員数は,II-48表のとおり,合計1,027人で,50年におけるその面接回数は,II-49表のとおり,合計1万375回である。その内訳は,集団に対するもの5,593回,個人に対するもの4,782回で,委員1人当たり来訪回数は7.5回,面接回数は10.1回となっている。 II-48表 篤志面接委員数(昭和50年12月31日現在) II-49表 篤志面接相談内容別実施状況(昭和50年) 更に,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者のために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)による宗教教誨を受ける機会が与えられている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を陶やし,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期刑の受刑者に対する宗教教誨は,特にその心情の安定に資している。昭和50年末現在における教誨師の数は,1,340人で,各宗各派にわたっている。50年中における宗教教誨実施状況は,II-50表のとおりである。II-50表 宗教教誨実施状況(昭和50年) 出所時教育は,矯正教育の総仕上げとして,重要な意味を持つ。その内容は,現在の社会情勢,出所に関する諸手続,更生援護・職業安定・民生福祉等の制度や利用手続などの解説及び教示,釈放後の生活設計に関する助言・指導,出所に当たっての心身の調整など,出所後,社会生活への円滑な移行に役立たせるためのプログラムが準備されている。しかし,出所後,円滑な社会復帰を促進するため,釈放直前における出所時教育を超えて,入所から釈放に至る一貫した計画的な処遇の流れの中に釈放前処遇計画が準備される傾向にある。欧米諸国における釈放前一定期間の開放処遇,外部通勤,ハーフウェイ・ハウス等の活用と,それに続く仮釈放といった行刑の構成がその典型的なものであるが,我が国においても,開放的施設,構外作業場等は,一面ではこの意味で利用されている。 |